こころあそびの記

日常に小さな感動を

網走ユースホステルの思い出

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 後期試験が終了した日の夜、できるだけ遠い所まで行こうということ以外に計画のないまま、夜行列車に乗り込んだ友人と私。早朝の網走駅前に降り立ち、まずは朝コーヒーでも飲んでからとタクシー乗り場へ向かいました。
 ドライバーさんに「すみません、どこかモーニングサービスやってるところありますか?」と尋ねた若い二人はどんな風に思われたことでしょう。今思えば無謀にもほどがあります。怖いもの知らず、世間知らずの二人連れでした。
 「こんな時間にそんな場所はないが・・」、あそこならと思い至った様子で車を発進してくれました。ドキドキして一面の雪景色を見ているうちに着いた所は「網走ユースホステル」でした。
 あれから、もう半世紀近くが経過しましたが、流氷接岸のニュースが伝えられる度に胸が熱くなる私です。
 夜のミーティングでいつもギター伴奏してくれた“たーちゃん”、帯広までホワイトチョコレートを買いに行く私達に付いてきてくれた“しもちゃん”、夜のキャンプを計画してくれたお髭の“あおちゃん”、美幌峠に写真を撮りに行くというので無理を言って連れて行ってもらったカメラマンの“上野旭さん”、そしてそんな若者たちを責任持って見守って下さったペアレント。結局、居心地が良すぎて3週間も連泊してしまいました。
 当時の私の心はささくれ立って人との距離が分からなくなっていました。そんな頑なな自分があの雪の中で溶けていったのです。その後の自分は人を信じてよいのだとわずかながら思えるようになりました。
 夢のような旅で、ドライバーさんをはじめ沢山の好意に満ちた人々との出会いが私を少しだけ変えてくれました。
 ありがとうございました。
 今は九州に住む友人とは淡交ながらも北海道というキーワードでしっかり繋がっています。彼女の存在があの日々を思い出させ人生を励まし続けてくれているのです。