こころあそびの記

日常に小さな感動を

木の芽起こしの雨

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「くれないの
 二尺伸びたる薔薇の芽の
 針やはらかに 春雨の降る」 正岡子規

 この季節には必ず思い浮かべる好きな歌です。
 
 今日みたいに静かな春の雨に濡れている薔薇をこんなに正確に忘れ物なく詠み込める子規は、やっぱりすごい人です。あの横顔の肖像写真とこの柔らかさが重ならないのは私だけでしょうか。
 ところで、薔薇は2月に根っこから目覚めることを教えてくれたのは薔薇の生産者の方です。見えない土中の自然のしくみを誰が知りましょう。根っこが先であることを知ることは大きな発見でした。自然が教えることはいつも私達の生き方のお手本です。
 十分に根っこを伸ばしたあとに、いよいよ地上部が伸び始めます。その伸び方は、まるで魔法がとけるようで、毎日何センチも伸びていく様には驚かされます。薔薇は本来そういう逞しい生命力を持つもの。トゲで他を寄せつけず孤高に誇らしく咲き誇ります。
 でも、野生種は別として、薔薇を育てることは至難の業で手間のかかることこの上ありません。
 その経験をした者には、星の王子様が、覆いを懸けて水を遣って丹誠込めて育てた薔薇のことを心配したとき、君が世話した花は世界中に一本だけで、他のどんな薔薇とも違うのだと狐に諭されるシーンがより胸に迫るのです。
 薔薇は我がままで、ちょっとでもサボったら病気になります。いつも私の方を向いていてちょうだいとねだってくる厄介な花です。
 それでも、ターシャ・チューダーさんに、最後は薔薇作りをしてみたいと言わしめた魅力ある花にちがいありません。