こころあそびの記

日常に小さな感動を

山椒魚み~つけ

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 「昨日とは打って変わって、今日は寒さがぶり返します。コートを忘れずに!」
 お天気キャスターの活躍しがいのある三寒四温がこの先もしばらく続きそうです。明るくなってきた陽光に騙されないで、上着を持って出かけましょう。
 衣を更に着るから如月。あまりにそのまますぎて、その解釈には違和感を持ってしまいます。“きさらぎ”という音の美しさを生かせるような意味付けはできないかしらと探してみても、語彙力がなくて悲しくなるばかりです。
 ところで、昨日滝道で人だかりがありました。
 「ほら、あそこの草の下にいるよ。もうじき、出てくるよ」と通りがかりの人達に教えてくださるご親切な方の指の先をたどって川の中に目を凝らしましたら、いました!大山椒魚がいたのです。
 茶色のせいか怖い感じは全くなくて、毎日こうやって皆に見てもらっているせいかお茶目にさえ見えました。
 隣り合った人どうしで、「ほら、あそこ!」と教えあったり喜びあったりしている様子にほっこりしたことです。好ましい対象物に向かって心を一つにすることで体の中に元気が湧いてきたように感じました。
 山椒魚といえば井伏鱒二さんです。
 名訳として知られる「勧酒」(唐代の詩人于武陵作)の抄訳。
 「コノサカズキヲ受ケテクレ
  ドウゾナミナミツガシテオクレ
  ハナニアラシノタトエモアルゾ
  「サヨナラ」ダケガ人生ダ」
の最後の一行が特に有名ですが、37歳のときに訳されたと聞くとさもありなんとも思えます。
 若いときの別れは悲しくてこの世の終わりかと思えるものですが、年齢を重ねますと別れの色合いが変わってくるようです。相手の明日に拍手が贈れるようになったら熟してきた証しかもしれません。
 卒業シーズン。涙なみだの子も、そんな子を見て「なんで泣くの?旅立ちの日やよ」という子もいたっけ。感性は幼い頃から人それぞれなのですね。