こころあそびの記

日常に小さな感動を

常磐木落葉

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庭の泰山木が大きな葉っぱを落とす準備を始めています。その葉は柔な竹箒では逃げるくらい堅くてたくさん落ちます。もうすぐ、その時期がやってくる。秋ではないのは何故かしらといつも不思議に思っていました。
 先日、大阪市立大学理学部附属植物園を訪ねた帰り際、どうしても知りたくて思い切って事務所にいらした園長さんに、
「常緑樹はなぜ、春に落葉するのですか?」と質問してみました。
「それは葉には寿命があるからです」。
 素人にも分かるように選んで下さった言葉に、ぐさっときました。瞬時に、人生を連想してしまいました。
 春に新芽で魅せ、秋に紅葉して散っていく落葉樹の葉の寿命は半年です。その姿は詩歌に最も詠まてれいることからもわかるように、人間の五感を擽って消えていきます。
 反対に、常緑樹は年中その姿を変えることがありません。あって当たり前の緑です。昔の大阪の森は楠を主体として形成されていたと言います。どこのお宮さんでも樹齢何百年の大きな楠がみられます。鎮守の森に入ると落ち着くのはこれら常緑樹のおかげです。しかし、この常磐木といわれる緑にも確かな循環があったのです。
 彼等は秋ではなく、春になって次代の新芽を見届けてから落葉するそうです。少し赤く色づくのはアントシアニンで少しでも光合成を長持ちさせようともがくためときくと、ますます健気さに感動します。しかも、落ちると決めたら一週間のうちにミッション完了です。
 落葉樹の美しい生き方にも、常緑樹の包容力と世代譲りの潔さにも惹かれます。自分の寿命はどちらを良しとすることかと神社の大樹に尋ねます。