こころあそびの記

日常に小さな感動を

つばき図鑑

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 赤いつばき 白い椿 斑入り椿も咲きにけり。
 椿が花盛りです。
 
 昨夜BSで「東大寺 お水取り」が生放送されて、その堂内には和紙の椿が飾られているとアナウンスがありました。今年もこのお仕事を賜って見事に納められた方々に感謝申し上げます。
 今は花屋さんの店先に洋花など目移りしそうな珍しい花が多くありますから、椿の魅力を知る機会が減っています。思うに、椿の花の魅力はなんといってもその存在感ではないでしょうか。「詫助」が籠に一輪挿してあれば、それだけで茶席は引き締まります。
 そして、お水取りだけではなく神事や宮殿でも御神木として使われたと記録されています。その理由はその照り葉の瑞々しさが持つたくましい生命力に霊威が宿っていると感じたからでしょう。
 「葉広 斎つ真椿 其が花の 照り坐し 其が花の 照り坐し 其が葉の広り坐すは 大君ろかも」(古事記 仁徳天皇の皇后磐之姫の歌)
 硬くて傷つくことない葉っぱのいのちの輝きが古代人に愛されて、神聖視されていたことがよくわかります。
 その後、平安で華美な時代には書画に登場しなくなった椿ですが、武士の時代からまた息を吹き返してくるそうです。落ち椿の潔さも男社会に愛された由縁でしょう。どこまでも、椿の生命力は男の人の旺盛さに共通するものであるといえるのかもしれません。
 花のあとには時間をかけて固い実が成ります。この中に宿した椿油は今も現代人の乾燥した肌を潤してくれる貴重な油です。私の知る採集名人が、その日を楽しみに今日も花盛りの椿の横をバイクで走っておられる姿が目に浮かぶようです。
 朝の椿を堪能して帰ってきてテレビをつけたら、十三代三輪休雪さんの作品の壺に、新芽を付けた柳の枝がゆったり垂れた根元に小さく椿が挿されていました。いいお床でした。
 休雪さんの「受け継ぐものは秘伝ではない 湧き上がる情熱だ」という言葉に、生きるとは今日のいのちであることを念押ししていただきました。