こころあそびの記

日常に小さな感動を

大和路散策

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 桜の開花宣言が各地から届く頃になって、ようやく春が来たと感じさせるやいなや春の嵐がやってきました。蕾を開いてくれると信じて「花越こし」の雨音を聞いています。
 長らく出かけていないので、写真入りの本で「仏像を観る」ことにしました。
 私達世代のカメラマンといえば、入江泰吉さんと土門拳さんが二大巨塔でありました。その入江さんの撮られた仏像写真に紀野一義さんが文章を添えられています。
 紀野一義さんは著書「いのちの風光」などから想像するに、戦争中の壮絶な体験から、もともとお持ちだった意志力に磨きがかかったのではないでしょうか。大きな悲願を叶えるために後半の人生を捧げられたように拝察いたします
 ご本の仏像でいつか再訪してみたいと思う仏像は東大寺法華堂の梵天です。JR奈良駅で降りて、興福寺から春日大社を回って法華堂へと歩いた日が懐かしく思い出されます。
 法華堂は改修前、暗いお堂に本尊不空絹索観音菩薩像を中心に所狭しとたくさんの仏像が並んでいました。そんな中、いつも一番に目に焼き付くのは梵天でした。その大きさと揺るぎのない表情は寄る辺を失った者が頼るに十分な力を持ってドンと存在していました。
 梵天勧請。紀野先生に学びました。仏様にものが言える神様だったのですね。今度お会いしたときは、一つ賢くなりましたとご報告しようかな。
 法華堂から東大寺本堂へ階段を下りたら、裏の道を正倉院の方に進みます。正倉院御物の歴史的パワーを感じる人の何と多いことでしょう。建物にもその不思議さが染み付いているように思えるのは私だけでしょうか。
 さらに戒壇院で四天王像を拝みます。でも、残念なことにこちらも改修中。やはり、お堂の中で拝顔したいという我が儘は、晴れて改修が終わる日までしまっておくことにします。
 入江泰吉さんの代表作。白壁に馬酔木咲く小径は戒壇院から奈良駅に帰る途中です。
 雨が上がって、コロナが収束して、各お堂の改修が終わったら、なんて言ってられなくて心は早くも動き出しています。