こころあそびの記

日常に小さな感動を

うれしかったこと

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 映画「痛くない死に方」が高評価を得ているといううわさ。ざっくりいうと、新米医師が迷いながらも、在宅医として成長していくお話です。
 医療は病院でも在宅でも同じではとお思いの方が大半だと思います。私も医療関係で仕事をしているのにそんな風に思っていました。
 しかし、映画の中で何度も出てくる「死の壁」を辛抱できず、救急車を呼んでしまったことは今でも悔やんでいます。あまりに無知でした。
 病院に運ばれた限りは点滴、酸素吸入などセット治療が施されます。病院は治療するところと決められているから、そうしなければ病院側は仕事放棄になってしまいます。その事情は理解できることです。だったら、家族の方が事前に病院に運べばどうなるかという知識くらいは入れておきましょう。
 痛くない死とは枯れるように死ぬことです。それができるのは家なのですが、それには家族の覚悟が問われます。見送りに手を加えないことが難しい時代になっていますから、家族も当事者も予習が必要です。誰もが初めての経験。願わくば落ち着いて送り送られたいものです。
 職場で、在宅医療チームの一員として働いている若い人に参考までにと紹介しておいたところ、デートには向かない映画だよといっておいたにも関わらず、彼女を連れて見に行ってくれました。
 「今まで見た映画で一番良かった」
 エエッ?嘘でしょう。と何度も確かめましたが、彼女もそう言っているというのです。
 死ぬということと生きるということを二人で考えさせられましたという彼の真摯な感想の一つ一つをうれしく聞きました。いい医療者に育つことでしょう。
 科学だけを勉強してきたような若者が、おばあさんが見る映画に共感してくれた。
 若者が作る未来に光を見た思いがしています。