こころあそびの記

日常に小さな感動を

「懐徳堂」

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 人間の欲は数限りないものです。中でも、知りたいという欲望は誰もが持つものであることは、朝からテレビ、ラジオが情報番組を垂れ流していることからも分かります。
 そして、今日では、SNSという強敵も現れて既存のマスコミも盤石ではなくなりました。何もかも大きな転換点を迎えようとしています。
 さて、大阪で誇れるものの一つに「適塾」があります。緒方洪庵を塾長として蘭学の勉強に勤しんだ跡が、今も北浜に残っています。
 しかし、その百年以上も前に、「懐徳堂」という漢学塾が、敵塾のすぐ近くにあったことはあまり知られていません。明治になって閉鎖されたそうですが、その業績を受け継いで大阪大学内には文庫が保管されているそうです。
 設立は江戸時代、元禄のバブルがはじけた1700年代。人々の向学心が高まり、町では寺子屋ができて、読み書きそろばんの教育が盛んになったのと同時期といいます。
 大阪商人といえば、がめつさだけがつとに有名ですが、成功した大金持ちは決して自分のためだけに蓄財したのではなく、世の中への還元も熱心でした。
 大阪は八百八橋といいますが、個人名の付いた橋の何と多いことでしょう。中央公会堂をはじめ今に残る建造物も多々あります。
 そんな商人たちが勉強したいという欲求に従って作ったのが「懐徳堂」でした。
 人は何故虚しさを覚えると勉強したくなるのでしょう。自分探しの行き着く先は自分の中身を逞しくしたいというのが、自然の欲求というものなのでしょうか。学ぶことが、今日のそろばん勘定に直接結びつくものではないのに、人は知りたい欲望に駆られます。
 現代は、バブルがはじけて失われた30年が過ぎ、ようやく自分の周りを見渡せる時期に入りました。と、その時「コロナ」が出現して、生活を否応なく変えようとしています。
 先日、zoom授業なるものを初めて経験しました。
 山形県富山県などから質問の手があがったことに驚きました。これこそ、誰でも勉強できる環境といえるのではないでしょうか。
 知らないことを知れば、それだけ世界が広がります。  
 大阪商人が立ち上げた「懐徳堂」も、志ある人は誰でも学べたといいます。世界に張り巡らされたネットワークによって知る機会が無限に拡大しています。
 ありがたいことです。