「先生、知らないのですか?」
老人施設の一室で看護士さんがドクターに言います。
「どの病室でも、お父さんはお母さんの名前を呼びかけますが、お母さんがお父さんを呼ぶことはありませんよ」
「そうなの?」とドクター。
ええっ!そんなこと知らなかったの?と私は心の中で密かに驚き。
なぜって、その医師が男性だからというだけではなく、専門は精神科だったので余計に面白くて笑いそうになりました。
精神科で脳と精神の関係を勉強されたとき、きっと男女差も学ばれたはずなのに、この誰もが知ってる現実はご存知なかったのです。
看護士さんが続けます。「女は冷たいもんですよ」。
近頃、男性、女性と分けることも憚られますが、実際は生まれた時から性別は厳然としてあるわけで、男の子は男の子らしく、女の子は女の子らしくなんて古いと思いつつも、両親は心のどこかに男の子と女の子の理想を描いているものだと思います。
その理想的な女の子とは優しい子であるはずです。ところが、冷たいとは一体どういうことでしょう。これは女は体力的に弱いから防衛する方法を身につけざるを得なかった故の進化ではないでしょうか。好ましくないものを遠ざける手だての模索です。
男の人が結婚したら妻はずっと一緒に居てくれる自分のものだという感覚が、月日が経つうちに女の人の重荷になっていく。それは男の人には分からない気持ちです。
竹内まりやが歌っています。
「愛されているだけでは幸せになれない♪」
この人はなんと上手に切り取るのだろうと、その部分になると耳をそばだてて聴いてしまいます。
精神科の先生、大丈夫ですよ。いろいろ怖がらせましたが、お互いの人間としてのリスペクトがあれば愛は続きますから。