こころあそびの記

日常に小さな感動を

「蟾蜍賦」

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 西国街道を象が歩いた!そんなの嘘でしょう!
 いやいや、本当なんです。
 1970年の大阪万博の際、インドから伊丹空港に空輸されてきた象たちは、当時、舗装もされていなかった西国街道を土煙をあげながら千里の会場まで行進した、させられたのです。
 そんな悠長な時代の268年前、この街道を赤穂まで必死の形相で駆け抜けた若者がいました。
 それが、箕面萱野の萱野三平です。
 昨日、春うららを感じながら、ぶらぶら旧西国街道を歩いてみました。
 行き着いた萱野三平邸に久しぶりに入ってみました。
 春日に満ちたお庭は彼の悩み事がすでに昇華されたように穏やかでした。
 俳諧にも才能を発揮したという彼の残した「蟾蜍賦」という文章の素晴らしさに感激しました。
 蟾蜍はヒキガエルのこと。ヒキガエルはえらいよ~と自虐して自分の立場の危うさを嘆いているのですが、27歳にしてこれが書けることに驚きました。
 昔は、勉強するものが限られていて、一点集中で漢学などを学ぶ環境から己の精神を練り上げたのか、それとも育った環境なのか、多分両輪で出来上がった人格なのでありましょう。
 翻って、現代人の精神の脆弱さはどうでしょう。
 AIに全てを任せられるから、精神力は不要になるということなのでしょうか。浮遊する精神に少し・・自分を棚に上げてお恥ずかしい。
 萱野三平は討ち入りの47人に入れず自刃しました。入らなかった理由は、同志と共に行きたいという忠義の気持ちと、お父様のお心に添わなければという孝行心の狭間に揺れたのです。
 辞世の句「晴れゆくや 日ごろ心の花曇り」
 お庭の石碑が春の陽光を浴びていました。