こころあそびの記

日常に小さな感動を

冷たい春風

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 ポストに自分宛の郵便物が届いていると嬉しいものです。それが知り合いからなら中身への期待が倍増します。
 昨日、郵便物の中に私宛のお手紙を一通見つけました。逸る気持ちを抑えて、家の中に入って開封しましたら、その文面は直ぐには信じられないものでした。
 でも、文字が踊ったり、行をはみ出したりしているところから、信じざるを得ません。
 お手紙の主は先月、脳梗塞を起こして二週間の入院を余儀なくされていたと報告されていました。
 彼女は七十代とはいえ八十歳に近い年齢でありながら老人施設でヘルパーとして働いておられます。確か、三年ほど前に自ら応募して採用が決まったとおっしゃった時には大丈夫?と訝ったものです。
 しかしながら、その気持ちは、病後もいささかも変わりないことを以下の文面に認めておられます。
 「元気にしておりますが、膝痛のため歩行が思うようにできず会社への復帰も体の状態を見極めて検討していただくことになっております。人が足らず、何でも、少しでも、お役に立てればと思ってますが、さて、どんなものでしょうか。 追伸 3月4月の冷たい風は毒でした」
 大きなご病気の直後とは思えない彼女の強い精神力に驚きました。文字とは裏腹に、文脈はショックで沈みそうな私の心を励ますほどにしっかり書かれていました。
 彼女は私たちの漢方セミナーに開始当初から皆勤で参加くださっている大切なメンバーのお一人です。”くらしの中の漢方養生“と銘打ってお話し会をしてきただけに、このお知らせは辛すぎます。
 人は与えられるのですね。何をいつ与えられるのかはわからない。この年までいくつも波を越えてきて、そんなこともたくさん見てきたけれど、それでも、何故という思いはそう簡単には消えません。
 病気を越えて、まだ生かされるなら、そのいのちを他者に役立てたいというお気持ちを尊敬いたします。生かされる限り、こんな利他精神を持ち続けたい。自分もそう覚悟しなくてはと思いました。
 “3月4月の冷たい風は毒でした”という追伸はグサッと刺さります。口を酸っぱくしてお伝えしていたはずなのに、この毒に侵されてしまわれました。私達は自然に対してなんと無力なことでしょう。
 どうか皆様、くれぐれも養生に努めてお健やかにお過ごしください。