こころあそびの記

日常に小さな感動を

信じること

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 病める者にとって同じ病から回復した体験談ほど効く薬はありません。
 膝が痛くて、もう手術しかないのかしらと表情を曇らせた方が来店されました。処方薬は痛み止めの貼り薬と頓服だけです。
 「いやいや、そんな。手術したら、その分、また自分の体に負担かけますしね。ところで、いつから始まった痛みなのですか?」
 「去年の11月から。」
 「ええっ。そりゃまだまだですよ。私も長い間、痛かったけど、ほら、今は跪くこともできるようになったのですよ。」
 「ほんとに?」
 「ほんとうですよ。時間はかかるけど、必ず自分の体が治してくれますよ」
 「わぁ、元気出ました。ありがとうございます。」
 こんな、会話ができる方なら絶対治るはずです。
 話を信じてくださったかどうかの証は、明るくなった表情とトーンのはね上がった声に現れています。彼女が帰り道で、痛みに耐えかねて元の木阿弥に返らないことを祈りながら、見送ったことでした。
 健康優良児の私も膝の痛みは経験しました。
 それは、父が入院したと知らせを受けた日のことでした。病院の帰りに膝の違和感を感じました。痛みをこらえて動き回っていたのですが、よりにもよって京都の四条通でいよいよ動けなくなって、娘に迎えにきてもらう羽目になりました。
 それから今日に至るまで、早や十年です。
 痛み解消に一番効果があったのは、氷で膝を冷やすことでした。家に帰り着くやいなや、毎日毎日冷やしました。
 炎症で熱を持っているのですから、冷やすことは理に適っています。膝に水が溜まるといいますが、膝に水を集めて冷やそうとしているというふうにも考えられます。
 とはいえ、仕事は休めないから連日働いていました。これが、良かったのだと今になって思います。少しずつリハビリをしていたのでしょう。
 どうしても痛い時だけ、薬に頼るのも一つの手ではありますが、忘れてはいけないことは、不具合が生じた体を治すのは自分であるということです。医療は治してくれるのではなく、手助けをしてくれるのです。
 体の声を聞いて自助努力すること。薬を信じるのではなく、自分の身体を信じることが何よりも大切なことだ思っています。