こころあそびの記

日常に小さな感動を

庚申の日

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 新稲(にいな)を東西に貫く道の中程に「庚申塚」があります。
 十干(甲乙丙丁戊己庚辛壬癸)の巡りの中の「庚」と、十二支(子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥)の「申」が重なる日のことを「庚申の日」といいます。
 暦で本日がその日に当たります。
 何の日かというと、4世紀あたりに中国の葛洪が著した『抱朴子』という本に出てきますから、随分昔から信じられてきた神様ごとです。
 まず、寿命と人の行いの善悪に関しては、
 「大きな悪事を行えば寿命を司る神様(司命)によって本来定まっている寿命から”紀(300日)“が奪われ、小さい過ちの場合は“算(3日)”が奪われる。また、積善をしなければ、例え薬を服用しても益がない。」と人が長生きするためには悪いことをしないようにと戒められています。
 そして、寿命が減るのを恐れて、庚申の日にどんな事をしたかというと、「庚申の日には、体に入り込んでいる”三尸(魂霊鬼神の類い)“が天に上って司命に人の過失を述べます。すると「紀」が減ります。だから、人々はその日には徹夜をして身を慎み、三尸が体から抜け出せないようにしたといわれます(寝てしまうと三尸が抜け出す)」とあるから、人々は徹夜をして「守庚申」したそうです。

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 日本でも、平安時代にはすでに行われていたそうですから、「新稲の庚申塚」はその貴重な遺跡です。こちらは、青面金剛の石塚が残っている正統派ですが、気をつけて歩いていると“庚申塚”はあちらこちらに見かけます。散歩しながら歴史探訪はいかがですか。
 それから、あら恐ろしや。
 「晦日の夜には竃の神様も天に上って人の罪状を報告する」とあります。
 なんと、今日の夜は“庚申”と”新月“の重なる日です。風も出てきました。雨も降り始めました。なんてね、今晩はお家でゆっくりいたしましょう。
 この『抱朴子』が書かれた後漢頃に、「天知る 地知る 我知る 人知る なんぞ知ることなしという」楊震の有名な言葉が残されています。
 いつの時代にも襟を正して生きる、寿命を全うして生ききることが、最重要な課題であることがよくわかります。
 私達が小さい時は、何かというと「お天道様が見てはるよ」と言われ、悪事は直ぐにばれると教えられました。
 今はお天道様という言葉を聞くことさえなくなりました。
 人間がはるか昔から畏れてきた天の存在。それを無視して生きることができるのでしょうか。
 
 ※本日は神塚淑子先生のご著書「道教思想10講」から  教えていただきました。「」内は抜き書き。(大意含む)