30メートルはあろうかと思える高木に淡い紫色の花が、梢を覆うように咲き誇っているのを見つけました。人がよく通る道ではなく、少し脇に入った雑木の茂みです。
便利な機能を使って写真解析しましたら、「栴檀」(せんだん)ということがわかりました。
あの栴檀に、こんなに美しい花が咲くことを知った喜びで、勇んでInstagramに投稿してしまいました。
「栴檀は双葉より芳しいっていうけれど、今の子供たちはみんな芳しい」とコメントまでつけて・・
後から調べたら、日本の栴檀ではなく、インドの白檀のことと知り、自分の早とちりを恥ずかしく反省しています。
この花の別名「楝」(あうちorおうち)は入江泰吉さんの『万葉花散歩』の写真で以前に見たことがありました。その時から、見かけることのない“楝”とはどんな花なんだろうと気にかかっていました。そんな積年の思い人と出会えたのですから、舞い上がってしまったわけです。
「妹が見し 楝の花は 散りぬべし わが泣く涙 いまだ干なくに」(山上憶良)という歌に中西進さんが「楝は高い梢をレース模様のようにおおって咲く姿が気品高く思われる」と添え書きされているのを読んで、その感じを思い描いたりしていました。
清少納言が「あうちの花いとおかしけれ」と記し、佐々木信綱が「夏は来ぬ」の四番に「あうち散る 川辺の宿に」と使っておられるくらいですから、実は古くから日本中に自生しているのではないでしょうか。見つけた雑木林には若い木も取り混ぜて数本の楝がありました。
目線より上に咲くから見つけにくいけれど、一度見つけたら来年も楽しみにできる花です。此処はアフリカ?と思わせるような樹形は広がりがあって、花は梢の先に群れて咲きます。
この楝。生薬として使われてきました。
樹皮や根は「苦楝皮」として、成熟果実は「川楝子」として、駆虫に役立つようですが、共に有毒でありますから、拾った花や実を口に入れないよう注意が必要です。
今、コロナの予防薬として大村智博士先生の「イベルメクチン」が話題になっています。イベルメクチンは疥癬の治療薬ですから、同じように疥癬をやっつける楝の毒も何か役に立たないかな?なんて結びつけるから、また、幻ブログになるのですよね。