こころあそびの記

日常に小さな感動を

水無月

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 陽性のというか、男性的といってよいのか、今年の梅雨は今のところ過ごしやすく経過しています。
 朝日の中で泰山木が見事に開いていました。高い所に咲くことの方が多いため、写真におさめるのは難しい花です。しかも、開いたら直ぐに朽ちていきます。
 ですから、この上ないタイミングで写真が撮れるように図らってくれた花にありがとうです。


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 さて、今日は一年中で日の出が一番早い日だそうです。4時44分。お天道様の早起きは此処までなのですね。もうしばらくすると、夏至ですから、いよいよ地上の暑さも本番を迎えます。
 昔から日本人はこの暑さにめげない方法をいろいろな知恵で凌いできました。
 家の造りは夏をむねとすべきと記したのは吉田兼好です。この暑さが今に始まったものではないと思うと、もう少し我慢できそうです。
 それから、夏には夏のお菓子が登場します。葛きりや氷菓子など涼やかな夏菓子で何とか楽しく過ごせるようにと先人の工夫がみられます。
 甘味の摂りすぎは水を溜めると言ったばかりですが、養生大家である孫 思邈は甘味は夏の養生に欠くことができない味といっています。活動エネルギーに必須ということでしょう。
 六月は別名、水無月。六月に因んだ「水無月」というお菓子は夏菓子の代表格です。店頭に「水無月」が並び始めると、うっとうしさは吹き飛んで、どれにしようかなとウキウキします。迷ったあげく、結局、白を選んでしまうのですが・・
 「水無月」の三角形の白い形は氷室の氷を表し、上に乗っている小豆は魔滅(まめ)、魔除けの意味を持ちます。もともとは6月30日に夏越しの祓いをして、一年の残り半分の無事を祈る行事に食すものでした。
 たっぷり乗っている小豆は体の熱を冷まし、体の余分な水を排出する効用を持つ生薬でもあります。
 熱を体外に放出するルートは3つあります。便、尿、汗(皮膚)です。毎日排便することと、おしっこを出すことは、熱中症対策としても大切であることがわかります。また、活動をためらう毎日かもしれませんが、適度に汗をかくことは熱の放出に欠かせません。
 養生の原則は「春夏養陽」ですから、夏は体を動かして、熱を籠もらせないようにしましょう。
 ただし、元々体の水分が少なくなっている陰虚の人や痩せ型の人は水分代謝に注意が必要です。人はみんな同じではありません。中医学では体質の違いを考慮することを教えています。
 その中国では、小豆を甘く煮たり、粒あん、漉し餡にして食べる風習はないと聞きます。小豆を煎じて利水に使うことはあっても、“あんこ”を食べることはありません。
 でも、わが国では季節に合わせて”あんこ“を入れた美しい和菓子が登場します。今月は「水無月」が食べられるから幸せ、という単純な喜びが健やかさに繋がるように思っています。