稲葉香さんから『極寒のドルポ越冬 122日間の記録』という著書がようやく届きました。
随分前に、道上洋三さんの「おはようパーソナリティ」に出演されてお話された内容が素晴らしくて、どうしても欲しいと思っていたご本でした。
稲葉さんは千早赤阪村にお住まいの47歳の女性です。18歳でリウマチを発症され、今は手や足に変形が進んでいるといいます。
このご本はそんな状態でありながら、ネパールのドルポという村(ヒマラヤ山脈に連なる標高5000メートルの高地)で越冬された記録です。
同じくリウマチという病を持ちながら、チベットを目指した僧、河口慧海の足跡を辿ることを目標に行動されています。その彼でさえ困難を極めた道を百年後に歩きたいと思う原動力は何なのでしょう。
ラジオで道上さんに病気のことを訊かれた彼女が「それが、不思議なんです。あっちに行ってる間は痛みがないんです」とおっしゃったことに、生きるということの深遠さを見た思いがしました。
私も何人かから、転地すると良くなったと聞いたことがあります。
ハワイに行ってる間は鼻炎が治まると言う人や、ウクライナに行くと皮膚アレルギーが治ったという人も。
初めは、気候風土がご当人に合っているから体の状態が良くなったのだろうと思っていました。例えば、肺結核の転地療法に高原が多いのは、肺は涼しさを好むからだというふうにです。
でも、それだけでしょうか。稲葉香さんの転地療法はあまりに過酷です。それでも好転する身体とは一体どういうものなのでしょう。
先に上げた、ハワイやウクライナへ行く人。この人たちは、その場所がすごく好きです。
レベルに差異はありますが、稲葉香さんが「どうしても行きたい」「河口慧海の行った場所に絶対に行くんだ」という強い意志を持ってその場に立ち、夢を実現している自分に満たされている状態がいのちを喜ばせたとは言えないでしょうか。
私たちは自由に生きなければ、いのち輝かせられないと、ドルポの雪と氷と空の写真を見ながら思うのです。
医者通いされる患者さんの中には、ストレスに慣れっこになって、「別にストレスは無いんですけど・・」とおっしゃる方のなんと多いことでしょう。現に、体はストレスを感じていることを、不調で知らせているのに、その原因が我慢であることなど考えが及びません。
交感神経が優位になっているなと感じたら、深呼吸、早寝早起きして、太陽光を浴びるなどを試してみましょう。それでも、しんどかったら、思い切って、自分が行ってみたい所に行ってみるという手段があることを、稲葉香さんから学びました。
夢でもいいんです。近所でもいいんです。いつも心に憧れを持ち続けること、これを思うだけでウキウキするという気持ちがいのちの守り神であることを忘れないでおきましょう。