こころあそびの記

日常に小さな感動を

蓮の日に

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 ポストにこんな華やかな絵はがき(写真)が入っていました。
 江戸末期の御用絵師、岡田為恭の蓮花図の部分とのこと。日本画の美しさに見とれます。美術に疎い私でも、高価な絵の具が塗り込めてあることが分かります。

 7月。例年なら、蓮の観察会が早朝にあちらこちらで行われる頃です。
 お寺や公園で見る蓮の花もよろしいのですが、ベトナムに咲く蓮も捨てがたいものです。
 土煙をあげて走るバスから見る視線の先には必ず蓮がありました。それは、作られた池ではなく、大きな水溜まりのような所に咲いていました。
 蓮なのか睡蓮なのかは不明ですが、あちらにもこちらにも野趣に富む景色を美しく彩っていた姿が忘れられないものとなっています。
 いつか再訪できたときには、アスファルトとコンクリートで固められて、水溜まりがなくなっていたら・・仕方ないですね。


 ところで、鑑賞するだけではなく、蓮は全ての部位に薬効を持ち、漢方薬として使われます。
 ①果実は「蓮子」といって、甘味で補脾作用、渋味で収斂作用があります。
 ②果実の中の青い胚芽は「蓮子心」といい、苦寒ですから心煩不眠の解消や、心腎不交の改善に「清心蓮子飲」という漢方薬に使われています。
③葉は荷葉。苦、渋、平で清暑利湿という薬効があります。暑さを冷まして水の代謝をよくします。
 ④花の蕊は蓮蕊といい、遺精や帯下に使われます。
 ⑤柄は荷葉梗。泥の中からすくっと立ち上がる一筋の柄にさえ薬効を見た先人に頭が下がります。
 
 特にこの暑くて多湿の季節には③にあるように、蓮茶が有効です。近頃は少し大きいスーパーなら置いています。蓮の香りがいかにも暑気払いをするに相応しいものですから、一度はお試しあれ。

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 蓮の花は、泥の中から咲くのに汚れがないことに多くの詩人、文人が魅せられました。
 「蓮花之君子者也(蓮は花の君子なる者なり)」と加藤徹先生の『漢文で知る中国』に収められています。
 北宋儒学者、周敦頤(1017~1073)が書いたエッセイに出てくる言葉だそうです。
 周敦頤は、ドロドロした俗世の現実(泥)の中に根を張りながらも、清浄無垢な花を咲かせる蓮のような生き方を思慕したようです。そして、学問によって精神を磨けば万人にも聖人に近づけるチャンスはあるという説を唱えました。
 
 媚びる色気を匂わせない蓮花に学ぶことがいっぱいです。