こころあそびの記

日常に小さな感動を

心は熱くなっても体に熱は溜めないで

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 「“熱中症”に注意しましょう、とテレビは言うけれど、どんなふうになったら熱中症なのか言ってくれない。そこを説明してくれないと分からない」
 とおっしゃる、八十五歳のご婦人の言い分はなるほどと思いました。
 「こまめに水分を摂りましょう」「バランスのよい食事を心がけましょう」「十分な睡眠時間を確保しましょう」
 これらの連呼のみでは、その前兆を見逃してしまうかもしれません。


 中医学では体に負担を及ぼす邪を「風、湿、寒、熱、暑、燥」の6つとしています。四季の移り変わりと共にこれらの邪も主役交代してまいります。
 夏という季節にあっては「熱、暑、湿」と他の季節よりも圧倒的に多い邪に取り囲まれています。
 誰もが「あつい!」と感じます。私はクーラーの中で過ごしているから関係ない、はないのです。自然の影響力はそんな柔わではありません。
 避けることができない太陽のエネルギーを全身に浴びていることを意識することから始まります。
 熱を浴びた体の熱を逃がすことに失敗したら、あるいは放熱する体力がないときに熱中症を発症します。
 熱したら冷ます!これが原則です。
 オリンピック会場でも氷柱を数本入れることのできるプールを準備していると聞きました。こうやって、物理的に早急に対処して凌ぐことも時には大切です。ただし、この荒療治は体力がある人限定です。
 
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 熱が体に籠もっているサインは赤い顔、口渇、多量の汗、発熱、動悸、めまい、舌が赤いなどにみられます。
 まずは、日陰に移動して、物理的にクーリングをして、水分補給をしましょう。
 その上での対処を中医学では、体に籠もった熱を冷ます漢方薬を用います。
 特に目に見えない“気”が熱で侵されることが、熱中症重篤化させる要因です。
 気の回復が遅れると、気が守っている毛穴が開き放しになって、大量の汗が流れ出てしまいます。ただでさえ減っている”陰“の物質がより傷つきます。
 そこで、漢方薬「白虎湯」を使って、熱を冷まして津液をキープします。
 嘘みたいですが、この時期に服用しながら屋外で作業されている方も実際におられますから、嘘ではありません。
 この漢方薬の君薬(主成分)は、皆さんが骨折したとき固めてもらう石膏です。石膏は白色なので白虎湯の「白」までは分かりますが、”虎“はどこからきているのでしょう。
 ”陰陽五行論、春は東で青色、守護神は青龍、秋は西で白色、守護神は白虎というところからきています。
 春は鼻水を止める小青竜湯。秋は体の熱をとる白虎湯。というふうに使います。
 漢方だけではありません。“竜虎相搏つ“と申します。お相撲も東と西に相対して戦います。身の回りの意外なところで陰陽五行を使いこなしているとは、ちょっと親しく思いませんか?
 
 この盛夏の頂点を過ぎれば立秋の声が聞こえてきます。皆様、どうぞお体お大切に、無理をしないを心がけてお過ごしください。

 (追記) 補気生津の人参を加えて「白虎加人参湯」もお試しください