こころあそびの記

日常に小さな感動を

立秋の朝夕に鳴きます

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 この大雨に入る数日前、朝方の庭でひぐらしの一鳴きを聞きました。
 みんみん蝉が送ってくる波長に無頓着になった頃に、明らかな旋律を聞かせるひぐらしの鳴き声は心に染みるものです。特に、山道で聞く「カナカナカナ」は、自分が何ものかと考えさせる切なさがあります。

 七十二候は元は紀元前の春秋時代に中国の華北地方で考え出されたものですが、日本の気候にそのままあてはめても季節感にズレが生じるので、何度か再考されています。
 立秋の候に、「寒蝉(ヒグラシ)鳴く」が中国伝来の暦から江戸時代に日本で考えられた暦も含めて四回も使われています。
 「日ぐらしや 急に明るき 湖の方」(一茶)
 ひぐらしは未明や薄暮の時間帯の微妙な光に反応して鳴くそうです。いかにも詩人に好まれる繊細さを持つ小さいけれど秋を知らせる存在感ある虫です。
 
 今日からの立秋の末候(8/18~22)は「蒙霧升降」(ふかききりまいおりる)です。確かに、雨の中で霧の発生をみる日が続いています。
 この季節にはこんな自然現象が見られるという普遍性を考案した古代人の能力の高さは、AIを駆使する現代人もたじたじです。
 
 江戸時代には上田秋成がこの季節を「星河横空」(あまのがわそらをよこぎる)と考案しています。
 雨続きですっかり忘れていましたが、8月14日が「七夕節」でした。
 夏の夜空は水分が多くて、ただえさえ霞んでいるところに、天の川のミルキー色が流れて白んで見えます。その中に、織り姫と彦星と白鳥座を探すのが夏の宿題のお決まりです。残念ながら、今年は新暦も旧暦も七夕祭りが出来ずに過ぎてしまいました。
 
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 立秋の候。空が高くなって澄んできます。
 とても良い気候なのに、春と秋は体調を崩しやすい季節です。それは、陰陽が入れ替わる時だから、体に疲れがあると、上手くその流れに乗れなくなるからです。
 秋は燃え盛った火が、収束していくイメージです。元気がなくなるのではありません。稲穂が実るように、体の中を充実させて冬の寒さに耐えられるように作り替えるのです。
 自分では気づかない体内変化が、季節に合わせて体を守ってくれている。そんなふうになっているなんて、当人は露ほども感じてはいません。でも、ちょっと知ってあげることで、体が喜んでくれるかもしれませんね。
 暮れるのも早くなり、知らず知らずのうちに体が冷えています。お風呂に入ってみると、如何に冷えていたかがわかります。
 「あぁ、いい気持ち!」と思わず声に出てしまう心地よさ。
 冷えて良いことなど一つもなくて、血行不良は全ての病の温床です。
 夏は発散。秋は収斂。春夏に努力した結果が採り入れられる収穫の秋がそこまでやって来ました。