枕元で「チッチッチッ♪」と虫の音がします。どうやら、家の中に入り込んだようです。
こういうときに威力を発揮するのがネットです。
早速、「チッチッチッ 虫の音」と検索したら、「鉦叩き(かねたたき)」とあって、音声検索で確認する事までできました。
若い時なら、きゃー!とばかりに追い出すことを考えたでしょうが、この年になると同居を楽しむ余裕があります。おばあさんになることもいいことだと独り言ちています。
患者さんで、暇を持て余すとこぼす方がおられましたので、あり余る時間を持てる特権を手に入れたのですから楽しみましょうと申し上げましたが、「そうでしょうか」と、100%の納得は得られませんでした。
当然、遊業期は淋しさが付きまといます。しかし、そういう悲しみと戦う体力、気力がなくなっていることが老年に与えられた恩寵といえないでしょうか。受け入れ上手がコツかもしれません。
虫の話題をもう一つ。
近頃、芝生の上に居ると、中村汀女さんの俳句が思い出されてなりません。
「とどまれば あたりにふゆる 蜻蛉かな」
昔から、なんて巧みな表現だろうと感心して記憶している数少ない俳句の一つです。
じっとしていると、自分の周りに蜻蛉が集まってきたのではないかと思うくらいに蜻蛉に取り囲まれるのです。蜻蛉は人が好きなのかしらと思ってしまいます。
そして、ついこないだまでのシオカラトンボに代わり、近頃は赤トンボです。
赤トンボはなぜ赤いか。これも、ネットで、産総研の二橋亮研究員に教えてもらいました。
赤い色は夏の太陽を受けてできる活性酸素から身を守るための発色だったのです。
それは、トマトのリコピンやブロッコリーの緑と同じ作用です。人間はそれを食品として採り入れることに熱心ですが、動植物は自分で抗酸化物質を生成する能力がある。彼らの方が一枚上ですね。
一つの個体はその閉じられた体の中で完結できるように作られているものだと、彼らから教えられるのです。欲張らずともよいと。
それから、赤い色といえば、春になるといつも愛おしく思うことがあります。萌え出す幼い葉っぱに、あなたには初めて浴びる太陽の光は眩しすぎるわよと赤いサングラスを持たせる自然の準備周到ぶりに恐れ入ります。忘れ物をさせないのも自然のすごいところです。