こころあそびの記

日常に小さな感動を

百日紅

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 百日紅という名前は開花時期が長くて、6月から10月まで咲き続けることから名付けられたといいます。猿が木を登れないくらいツルツルした特徴ある幹ですから、見間違えはない木です。
 個体差があるのか、初夏から見事に咲き誇っているお宅を見ると羨ましく思っていました。夏の花は入道雲とセットがおさまりがよろしいですものね。
 見上げること1ヶ月。8月も終わろうとした頃に、我が家の百日紅も咲き始めました。遅い開花ですから仲秋まで咲き続けてくれるシンボルツリーです。
 お花は集合花です。独特なピンク色のひらひらした花びら一枚一枚が一つのお花です。蜜はたっぷりあるのか、はたまたこの季節は花の端境期なのか、いつも蜂が寄っています。

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 8月末日となりました。
 私にとっては、人生のリターンの月であったことを実感しています。
 お恥ずかしいことですが、大きな失念をしてしまいました。
 大切な方とのお約束をすっぽかしてしまったのです。
 言い訳の言葉も出ませんでした。ただただ、こんな自分になったことに呆然としました。
 どんなに頑張っても、若い肉体には戻れないことを痛感した夏です。

 肉体は確かに老いたのです。気をつけなければ、他人にご迷惑をおかけするのだと情けなくなりました。
 一方で、衰えた肉体になったから感じることがあります。
 それは、自分が細かい手仕事が好きだったのだという発見です。そう思うと、台所仕事も職場の仕事も、とても愛おしくなりだしました。
 若い力任せの作業は早くて、それはそれで助かったのですが、老年なりの仕事も、丁寧に心を込めれば若い人にはできない何かをプラスする事ができます。
 肉体の衰えがもたらす福音は「丁寧に生きる」ということではないでしょうか。
 そういえば、勢いだけで生きていた父が老年になって周りの人間に対して思いを深くしたり、オシャレに気を配るようになりました。そんな人だったかなと思うように生活が丁寧になっていったのです。
 ゆったりとした余裕ができると、丁寧な時間を過ごすことができます。それが、老いる特権です。

 約束を忘れたことは、「あなたもその年になったのですよ」という戒めとして。
 そのおかげで、丁寧に生きられる年になったことに気付けた8月でした。