こころあそびの記

日常に小さな感動を

ててかむイワシ~♪

f:id:snowrumirumi:20210914183627j:plain


 仕事帰りに寄ったスーパー。買うつもりのない魚売場を通り過ぎようとして、思わず踵を返してしまいました。
 「イワシ1パック100円」。しかも、「おつくりにできます」と書いているではありませんか。
 疲れた体でこの子達をさばけるだろうかと一瞬の逡巡の後、2パックもカゴに入れてしまいました。
 長けた庭の紫蘇と、すでにカゴに入れたネギと生姜でナメロウにした絵が見えるような気がして意気揚々と買って帰りました。
 好きなことをして心が躍ると、たとえ体が疲れていても苦にならないのですよね。
 頭を取って、お腹から親指を入れて中骨にそってそ~っと開いていきます。洗いながら皮を剥がしたら、ほら、出来上がり。
 お味噌と醤油を足して、おばあちゃんの“ナメロウ”はいかがですか。美味しいとみんなに褒められた喜びで疲れが吹き飛ぶ夕飯でした。

f:id:snowrumirumi:20210914183905j:plain


 イワシは節分に出回るから、春のお魚かと思いましたら、秋の季語でした。

 八方に鰯が立って秋の道 / 坪内稔典

 空一面に広がる鰯雲に包まれると、異次元に迷い込んだような感覚になります。
 雲はきまぐれで直ぐに姿を変えるものですから、出会いは奇跡です。この秋も鰯雲とめぐり逢いたいと念じておきましょう。

 イワシの美しさを満喫出来るところがあります。それは水族館です。
 大水槽の前の人気者はジンベイザメマンボウばかりではありません。
 イワシの大群が、群からはみ出さずに銀鱗を輝かして右へ左へ泳ぐ姿は迫力があります。一匹一匹はあんなに小さいのに、集団のダイナミックな動きに見とれます。
 群れを作って大きく見せて、他の魚に襲われないようにしているという童話もありました。
 弱い魚と書いて鰯。自らの命を群れを作ることで守り、でも脱落した日には誰かのためにいのちを投げ出して奉仕する。
 鰯の存在が海のいのちを守っていることを知ると、鰯料理の美味しさが増します。

 昔は「手手かむイワシ~」と声あげながら、行商の魚屋さんが家の前まで天秤棒を担いで来てくれたものです。
 若いときには、鰯の小骨が気になったりしたものですが、この年になると、その素朴な味をたまらなく美味しく感じます。
 二年前まで通った府立大学。学食で「イワシの煮付け」を食べて帰ることを楽しみにしていました。子ども達に人気がなかったので、家で調理することはなかった献立でしたが、近ごろは、手作り梅干しを投入して、自己流「イワシの煮付け」を一人分作っています。食べれば、府立大学の楽しかった日々が蘇ります。