こころあそびの記

日常に小さな感動を

美堂おゆう先生の個展

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 晴天が続きます。
 「日の出の山影を撮影するためにカメラマンが夜明け前からやって来る」と奈良からの報道がありました。
 季節を問わず日の出、日没は美しいものですが、空気が澄んで、天の高い今だからこその一枚を狙って、馳せ参じる気持ちは分かるような気がします。
 カメラマンは一瞬を切り取る仕事です。
 Instagramに上がってくる写真にいつも感心させられています。この一枚を撮るためにどれほど歩いたのだろう、何時間待ったのだろう、寒かったのでは暑かったのではと老婆心が先立ちますが、写真には確かにその人の根性が見えます。
 昔、もう半世紀も前、カメラマンという職業がもてはやされた時期がありました。私も、北海道で出会ったカメラマンに憧れというか淡い思いを抱いたことがありました。
 彼は、流氷だけを撮る人でした。それだけで少女が夢見る乙女になるに十分でしょ。
 冬季は知床のにしん番屋にたった独りで住まう生活をしていました。一枚の写真を納得いくものにするために、極限にまで自分を追い込むスタイルでした。彼の写真は、題材からも想像出来ますが、荒涼感がテーマだったのかもしれません。

 芸術家は自分との向き合い方でそれぞれに違った個性が見えてくるように思います。
 共通しているのは、自分に厳しいこと。目標に真摯でなければ、素晴らしい作品は生まれないように思います。
 
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 今日は日本画家、美堂おゆう先生の個展に行って参りました。
 会場に飾られた絵と、日頃お目にかかってお話する先生とは雰囲気が違いすぎます。
 「そりゃあなた、ジキルとハイドよ(笑)」なんておっしゃっていましたが、一旦、制作に入ると人が変わってしまうくらい集中するのが芸術家の性であることを再認識しました。
 明るくてコロコロよく笑う先生なのに、絵は静かに笑っています。林であろうと星空であろうと沈静し過ぎることが出来ないのは、先生の本性なのだろうと感じたのですが。

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 北山杉の絵。「この絵は大変だったんだから。スケッチのために山に入ったものの、主人が迎えに来てくれなくて」
 そうなんです。先生は専業画家ではなくて、主婦業もされています。絵に孤独感がないのは、バックの温かなサポートがあるからでしょといえば叱られるかな。

 会場を後にして、帰りに見た桂の木。桂の樹形と黄変して散っていく感じが好きです。
 この一瞬を捉えられるのは自分の目であり、収蔵するのは自分の頭。
 絵画や写真は、それをいつでも取り出すことを可能にしてくれるツールです。そばに居てくれると、その一瞬が甦ります。
 お気に入りの一枚はありますか?
 
 追記
 美堂おゆう個展は阪急神戸線御影駅すぐ「世良美術館」にて10/10まで好評開催中です
 お近くの方は是非に。