孫が「僕もピアノを習いたい」と言い出したのが小学四年生の時でした。中学一年生になった今も、好きで続けてくれていることがうれしいことです。
私は、中学の時に家の都合でお別れして以来、ピアノを聴けば切なくなる思いがします。長い間、クラシック音楽が聴けない自分がいました。
長らく離れるとどんなことでも愛着がなくなるものです。
ところが、近頃になって聴いてみようという気持ちがなぜか復活してきたのです。
どちらかというと短調が好きなほうですから、静かな美しいメロディーを心地よく思っているのに、なにか心に引っかかりのある日の朝は体が拒みます。ところが、不思議なことに、仕事がうまくいった帰りの車では華やか過ぎるチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番をエアピアノで一緒に弾いている気になったりします。
クラシック音楽はいいなぁ。音楽の楽しさをこの年まで封印していた狭小な自分をかわいそうに思っています。
今、ワルシャワではショパンコンクールの真っ最中です。
いつも、結果をニュースで知るのみでしたが、今年は角野隼斗さん、牛田智大さんとお顔を知った人が予選を通過されていることが嬉しくて注目しています。
ピアノコンクールを見よう、そう思うようになったのは、なんといっても『蜜蜂と遠雷』という小説が面白かったこと。ひいては、その後にその舞台となったヤマハコンクールのドキュメンタリーが放映されたことの影響が大きいと思います。
そのドキュメンタリーの主人公は牛田智大さんでした。可愛らしくて幼い頃から国民的アイドルでした。それでは自分が許せないとピアニストを目指すという道を自ら選んだのです。通過発表のたびに見せる彼の心理状態の変化は音楽コンクールの過酷さを知らしめていました。
今回も健闘しています。二次予選突破です。たくさんの応援団が日本から応援していますよ。
一方の角野隼斗さんは、なんと東大工学部の院出身です。一日に勉強とピアノに七時間ずつ振り分ける生活をしていたと聞きました。
彼はピアノユーチューバーであり、すでに80万人以上のフォロワーがいます。ですから、今回のショパンコンクールの視聴が新記録を樹立したのは彼の功績とも言えます。
「髪型はショパンにしてください」と散髪屋さんにお願いした甲斐があって、現地の人もショパンの降臨とも言ってくださるようです。さすがは、ユーチューバーです。姿形から入る。その余裕がこの人の持ち味なのでしょう。
大きくて、指先が細い手がピアニストの条件とすれば、彼ほどぴったりの人はいないでしょう。それが神ワザとしか思えないほど動くんです。見てる方でもしんどくなるくらいなのに、ご本人は楽しそうなのです。ただただびっくりです。
今、世界中にファンがいる日本人の演奏がワルシャワという日本から遠く離れたショパンの聖地で奏でられていることに、どこか誇らしいというのが素人の感想です。