丘の上はどんな景色が広がるのだろうと期待させる道を旅行気分で上がっていきました。
行きたいな、北海道。残念!ここは、淀川左岸の堤防でした。
水面にはビル群が映って、今日は川の流れが静かです。
突然ですが、人が涙するのはどんなときでしょう。
昨晩、NHKの「ファミリーヒストリー」で、主人公の俳優の堤真一さんが、こらえきれない涙を流されたのを見ました。
ドラマの中の登場人物になりきって心理を練り上げ、心動くシーンの撮影を幾度となく演じてこられたことでしょうに、作り話ではない自分のファミリーヒストリーに感涙されました。
東京制作のドラマは一字一句台詞が決まっているといわれますから、そこは大目に見たとしても、私だったら大泣きするだろうと、彼の気づきを我がことのようにうれしく拝見しました。
何が彼を泣かせたかというと、お父さんとの関係です。
思春期の男の子が難しいのは、経験ある親なら誰もが知っています。彼も、お父さんに刃向かう息子だったようです。
そして、憎まれ口。
「しがないサラリーマンなんて、僕はなりたくない」。
親の心子知らず。
昨日の放送で、そこのところが解き明かされていきました。本当にお父さんはサラリーマン一筋にあくせくしていたのかと。
堤真一さんが放送中、何度か驚いたように、知らなかったと繰り返されたのは、お父様が東大受験を勧められるほど勉強がお好きだったということです。
家族を養うために、自分のしたいことを抑えざるをえなかったお父様は常に寡黙で、決してご自分を披瀝することはなかったそうです。
その後、五十歳になって通信教育で大学に通われたという事実に続き、息子の知らなかった父親の姿が次々に明かされました。
そして、周りの人にも息子を頼むと言ってくれていたことを知った彼は、「知らなかった」と何度もつぶやきました。
自分と父は理解し難い関係なんだと諦めて生きてきたのに、お父様は息子をこよなく愛しておられました。
この思い違いは、どこの家庭にもあることです。
私自身も、テレビ画面を見ながら、自分に置き換えて見ていました。
好きなように生きて私たちを困らせていた父を許せなかった私。途方に暮れてそんな頼りない娘に相談してくる母。
父と母の心の内を何も知らなかったと今は思います。役立たずでごめんねと。
親と子とは、深い縁です。
どんな秘め事があろうと、親子であり続けます。
「真実一路」から堤真一と名付けてくれたお父様の本当の姿を知った彼は、根っ子を太くしてこれから更にいい役者になられるような気がします。
実際、「晴天を衝け」の平岡円四郎はドラマに色を付けてくれた感がありました。楽しみな俳優さんです。