先日、「虎杖」のことを書いたら、ありがたいことにたくさんの情報を頂戴したので、いくつかお伝えしたいと存じます。
清少納言の『枕草子』に出てくるという情報。
「見るにことなることなきものの文字に書きてことごとしきもの」(見るとなんともないのに文字にしたら大げさなもの)として、
「虎杖はまいて虎の杖と書きたるとか 杖なくともありぬべき顔つきを」(虎は杖なんかなくても大丈夫という顔つきしているのにね)
と、いかにも見たことがある様子で書かれています。そこから私が抱いた疑問は、虎という動物を日本人がいつ頃から知っていたかということです。
加藤清正の虎退治は朝鮮でのことですし、実際に虎が日本に入ってきたのは明治時代といいます。
なのにどうして、平安時代の清少納言が虎を知っていたのか、私はそんなつまらないことに引っかかっるから、素人なんだとつくづく悲しくなってしまいます。
清少納言は好奇心旺盛だった女性だったようですから、どこからか情報を仕入れていたのかもしれません。
次に、「虎杖」と初めて記された書物は明代の李時珍が残した『本草綱目』で、その中に「杖というのはその茎の様子から、虎というのはその斑点から」と書かれているそうです。
彼は75年という生涯のうち27年もの歳月をこの本の完成に勤しみました。1900種の薬物について52巻にわたって記された『本草綱目』は今も薬物、本草学の教科書です。
どうしてもやらねばならない。必ず後世の人達の役に立つ。そう思えるエネルギーは天命からくるとしか思えません。
さらには、面白い本も教えていただきました。
『植物の漢字語源辞典』(加藤喜光著)です。
「虎」は虎の全形。「杖」の丈は手の指を広げた長さ(尺)のことそれが十合わさって長いの意。
それに木を合わせて長い木「杖」、とした。
植物の名前を学校時代には習わなかった漢字の成り立ちから教える珍しい本です。しかし、ここでもまた、470種の植物を一つ一つの漢字から掘り起こした根気に学者魂を感じさせます。
李時珍の根性も、加藤先生の勤勉さにも感心するのですが、わたしの興味は清少納言はなぜ虎を知っていたかという一点なのです。考えても埒があかないのに、そこから清少納言の本当の姿が見えそうに思って、学問からは遠いところでもがいています。