「 畑大根皆肩だして月浴びぬ 川端茅舎 」
畑の大根が青々とした葉っぱをつけて、白い肩を土から出しているところを見かけるようになりました。
下に伸びていくはずの大根が、勢い余って上に肩を出している様子は、農家さんの真骨頂。到底、素人菜園では叶いません。
今日は大雪(たいせつ)です。大根の煮物などいかがでしょう。
我が家に帰り着いたときの安堵感は、台所から家中に広がる匂いにあるように思います。
若いときに身につけたお料理は作り続けてしまうもので、この季節、大根の煮物はよく作ります。
鍋に油を熱して生姜の香りがでたらお肉と大根を入れて炒めてから煮て、柔らかくなってきたら味を付けます。甘い方が美味しいですよ、という昔の料理教室の先生の言葉を律儀に守って、ご飯によく合う味付けにするから、こんなに大きく?育ってしまいました。
ちょっと反省して、近頃は手抜きをして油で炒める工程は省き、味付けも昔に比べれば薄くしています。
中まで柔らかく煮えるのは性が良い証拠。大皿に盛った大根がたちまちに消えるのは、そんな大根に当たった日です。ことこと時間をかけた甲斐があります。
おつけものや、大根おろしが胸のつかえを通してくれるのは、ジアスターゼのせいです。
そのほか、痰切りや免疫力向上作用まで、大根は昔から人々の健康に貢献してきました。
この歳末には、多くの神社やお寺で「大根焚き」が振る舞われます。
12月8日は、お釈迦様が菩提樹の下で悟りを開いたから、それにあやかって、無病息災を願うところから始まった。
いや、京都の了徳寺のいわれでは、親鸞聖人の説法のお礼に大根炊きで持て成したら喜ばれて、鍋底についた煤で「帰命尽十方無碍光如来」と書いて下さったことを起源にした。と諸説あります。
私の近所の神社は大晦日からお正月にかけて振る舞われます。大釜で一昼夜煮しめた大根は薄味で、大根の本来の甘さが際だっています。お世話して下さった年長の氏子さん達の心遣いがありがたい大根焚きです。
フーフー言いながらいただくと芯から温まって、新年の厄除けと健康が保証されたように感じます。
来年は焚かれるのでしょうか。大根の焚きかたを次の世代に伝承するためにも、いつものお正月を祈念します。