こころあそびの記

日常に小さな感動を

いっぱい食べて大きくな~れ

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 父母がお世話になった調停員さんは、同じ敷地内に住む妹よりも、ヨーロッパ在住の姉のことが気になると常に漏らしておられたようです。それはただ異国にいるからというのではなくて、親ならではの特殊な思いがあるように思います。
 ところが、ある日、転んで骨折してしまわれます。
 途端に、遠くの長女よりも、直に手を貸してくれる次女の有り難さが分かったとおっしゃったようで、母もその後、心の隅に置いていた教訓のように思います。

 かように、たまたまの順番ですが、初めに抱いた子供には特別な想い入れがあるのが母親の不思議な、正直な気持ちではないでしょうか。
 何もかも初めてともなれば、一つ一つ慎重にならざるを得なくて、次に生まれてきた子供とは時間のかけ方が違うものです。
 
 そんな愛し子を置いて、本日、娘家族は同僚の結婚式に出かけてしまいました。
 残されたのは、孫と私。
 この初孫は来春、首尾よくいけば高校生になります。そんな年頃の男の子はおばあさんなんて嫌がると思いきや、今もハグハグを許してくれる優しくて頼りがいのある子に育ちました。
 
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 その子の食事当番を仰せつかって、「何がいい?」と訊くと、「そりゃ決まってるやろ!」ということで、久しぶりに回転寿司屋さんに行きました。
 二人の時だけのスペシャルメニュー「マグロ祭り」です。
 身体が要求するのか、この年頃の子供はマグロが好きですね。確かに、EPADHAも豊富に含まれていますから脳の活性にはよさそうです。
 いっぱい食べて大きくなぁれ。
 思い返せば、私の親もそう願っていっぱい食べさせてくれました。
 戎橋あたりに今もある丸十寿司。昔と同じ経営者かどうかわかりませんが、先日通りかかったら同じ屋号を見かけたので、此処、ここ。父の言葉を思い出しました。
 「こいつ、すごいんやで。十皿以上食べよる。」とことあるごとに、私の大食ぶりを誰彼に披露するのです。  
 昔の一皿は大きいお皿に6貫は乗っていたはずですから、年頃には恥ずかしい思いもしましたが、自分も親になってからは、それは彼の自慢話だったのだと気づいて、楽しく聞けるようになりました。
 右肩上がりの成長甚だしかった頃にサラリーマンだった父は、接待したりされたりの毎日で舌が肥えていました。
 ですから、美味しいものは父に教えてもらったと記憶しています。
 今日も、孫と二人で食事をしながら、この場に父がいるように思えました。「もっと食え!」と。
 今度は私が孫に美味しいものを教えてやる番です。
 今日は「アワビ」の香りと「金目鯛」の粘りを気に入ってくれました。
 この子は一時、親の転勤で富山にいましたから、「ノドグロ」は知っています。
 富山の「ノドグロ」、伊豆の「金目鯛」。
 全国の美味しいものを食べながら、幸せに生きていってほしい。それが、すべての親の願いであることは、古今東西変わることはないでしょう。
 「いっぱい食べや!」。こんな幸せはありません。