こころあそびの記

日常に小さな感動を

『ドレミの歌』

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 明日は旧暦正月ということですから、今日は大晦日です。
 この時期、中華街では、「福」を逆さまに貼ってあるのを見かけます。「倒」も「到」も発音[dao]が同じだから、福を倒して「福に到る」ということのようです。漢字の国のお遊びですね。

 家庭で中華料理を作るための必需品はフライパンです。
 昔は鉄鍋でした。使った後は洗って焼いてから油を塗って、と手間がかかりましたが、今は進化してくっつきにくいお鍋が普及しています。
 それでも、耐久性を考えると、鉄鍋に勝るものはないようですが・・
 ところで、便利鍋「レミパン」をご存知でしょうか。
 
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 平野レミさんは、私に読書の楽しさを教えてくれた恩人です。
 中高生の頃、「明星」や「平凡」などの雑誌ばかり読んで、文字の本を読むことなく過ごしていました。 
 それは、小説よりも実生活の方がずっとドラマチックだったからです。事実は小説より奇なり。若い自分は、そんな風にうそぶくことによって、反抗心をごまかしてていたのかもしれません。
 小説より奇なることは、その後も次から次に起こって、人生とは一筋縄ではいかないことを知ることになるのですが、若くて世間知らずの少女の世界は狭いものでした。

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 そんな生活をしていた頃、一冊の本に出会います。
 『ドレミの歌』という平野レミさんの処女作でした。
 吃音だった少女が、学校に行ったふりして、山手線をぐるぐる何周もして帰宅したと書いてあった記憶があります。フランス文学者のお父様は決して叱らなかったそうです。
 あぁ、この人の青春もしんどかったろうなと素直に共感できました。
 そんなかわいい少女は、久米宏さんの仲立ちでイラストレーターの和田誠さんと結婚します。
 その経過がまた可笑しくて、和田さんはこの天真爛漫この上ないお嬢さんが可愛くて仕方なかったんだろうなぁと感じました。
 また、「私は心配症で主人の帰りが遅いと、交通事故にでもあったのかと、すぐ大騒ぎしてしまいます」という箇所もよく覚えています。私と一緒。
 続いて、「心配症もいいもんです。なぜなら、無事に帰ってきた時の喜びが何倍にもなるから」。なんてプラス思考!素敵な方です。
 「レミちゃんを紹介してよ」と、和田さんが言ったとき、それを聞いた人達は悉く、「あの子だけは・・・」とアドバイスしたそうです。それでも、屈しなかった和田さんは彼女の中に何を見つけたのでしょう。彼女の澄みきった自由な心は彼にしか見えないものだったようです。
 こんなに愛しい和田さんの逝去は、一読者として、つらくて心を痛めたことでした。
 
 今でも、こんなにスラスラ出てきて私を励まし笑わせてくれる本。
 彼女に抱いた共感が本を読み始めるきっかけとなりました。嘘偽りない気持ちが、私の頑なに閉ざした扉を開いてくれたのではないかと思っています。
 その後、本は読むようになりましたが、作り話は今でも苦手かな。やっぱり事実の方が響いてくる気がします。