こころあそびの記

日常に小さな感動を

橘の黄金色

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 庭に植えてはいけない木とされるものに、実の生るもの、垂れるものがあったように思います。
 ですが、我が家の庭はその昔は畑だったので果樹も植わっていました。古地図からは桑畑であったことを知ることができます。
 ビワや柿の木もありました。土がよいのか、どれもたわわに実って、木に登って収穫することが楽しみでした。
 その後、みかんの木を植えたのは父です。
 たまたま、優れた品種だったのか、実は小粒なのに味が濃くて甘くて、その上、内袋の皮が薄いときてます。庭に出る度にお腹がいっぱいになるまで食べたものです。

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 みかん。
 今や、店頭を席巻するほど種類が増えて、どれを買おうかと迷います。高級品種をカゴに入れるほどの財力もなく、といって美味しくなかったらがっかりですから、選定の時間が長くなりがちです。家の畑で取れた懐かしい味のみかんを探しているのですが、見ている人には迷惑なおばさんでしかありません。
 
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 ところで、牧野富太郎博士によると、「みかん」は袋の中に生える”毛“に果汁が溜まった部分を食しているそうです。
 そう言えば、時々、不熟のものにそれらしき痕跡を見ることがあります。
 こんな植物の不思議が来春の朝ドラの中で解き明かされるシーンもあればと今から楽しみなことです。
 
 みかんの別名のように思われている「橘」といえば、雛祭りの右近の橘を連想する方が多いのではないでしょうか。
 「橘」とは、日本の九州、四国、本州に野生していたみかんの一種で、食用というほど実の大きくないものを指します。ヤマトタチバナ、のちに牧野博士は日本タチバナ命名されています。
  一方、大方の人が思うみかんは、田道間守(たじまもり)が常世の国(中国南部)から持って帰ってきた食用のみかんのこと。当時は貴重なものでありました。

 「常世物この橘のいや照りに
 わご大君は今も見るごと  大伴家持」 

 植物学はさておいて、古代の人がみかんの何に惹かれたのかというと、常緑樹であること、冬の間に黄金色の実をつけていること、馥郁とした香、などから生命力が宿ると信じられていたようです。
 
 
 「 我が宿の花橘にほととぎす
   今こそ鳴かめ友に逢へる時    大伴家持

 みかんの花が咲いてホトトギスが鳴く季節が待ち遠しいですね。
 それにつけても、どれにしようかな?今日も店頭で迷っています。