こころあそびの記

日常に小さな感動を

一ノ瀬牧場の思い出

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 土曜日の朝はお弁当作りから解放されます。犬とひとしきり遊んだ後は、する事もなくボーッとテレビを観てしまいました。

 今朝は、八ヶ岳の蕎麦粉の寒ざらしという珍しい光景を見せてもらいました。世界中の川でこれができるかというと、そうではありません。友人から送られてきたウスリー川の映像の氷は茶色でした。日本の川の水がどんなに美しいものかと奇跡の水をありがたく思います。
 次に登場されたのは、山小屋を経営されている男性でした。週に一度、食料を背負って麓から山小屋まで上げげる重労働に耐えておられます。
 それは、この小屋はおばあちゃんが始められたということと何か関係があるのかもしれません。
 孫がおばあちゃんの遺志を継ぐ。
 「花は咲く」ではありませんが、私は孫になにを残してやれるだろうかと考えさせられた朝でした。子も見ている。孫だって見ているかもしれない。後少し。真面目に生きなければと思いました。

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 山小屋の皿洗いを見ながら、大学生の夏休み、信州、一ノ瀬牧場の民宿にアルバイトに行ったことを思い出しました。
 なんでもやってみたがりだったので、新聞に載っていた「夏休み中のアルバイト募集」記事を見て、直ぐに応募。採用されて意気揚々と出かけて行きました。
 今は、一ノ瀬牧場という名前は地図上になくて、あれは夢だったのでしょうか。
 緑の高原に細い小川が幾筋も流れて、その中にホルスタイン牛が遊んでいるのです。そんな写真を見て、絶対行きたいと思っていた場所でした。
 
 数人のアルバイトの人たちと一緒に寝起きして働くことになりました。
 初めてのことでもあり、仕事というより好奇心の方が勝って、楽しい毎日を過ごしました。
 調理場のお手伝いとお風呂掃除が割り当てられていたように記憶しています。
 お風呂場では大量の垢が溜まることに驚きました。そして、調理師の方の「お茶碗は底をしっかり洗うこと」という教えは今でも、洗い物をする度に役立っています。

 そんなある日、民宿を経営されているご夫婦とバイトの皆で一緒に雑談をしていたとき、奥さんが私の手を見て「苦労したことのない手」とつぶやかれました。
 私なりに家ではトイレの掃除も、雑巾絞りもしているのに納得いかないことでした。それでも、沢山の手を見てそう言われるのにはわけがあったのでしょう。あるいは、仕事ぶりが目だるくて、他の人のようには出来ていないことで、「使えない娘」と思われていたのかもしれません。
 何日かして、同部屋のバイトの子が発熱した時、私が「あの子は熱があるから今日は休ませてあげてください」とお願いしたら、即刻クビを言い渡されました。
 楽しい夏休みのバイトは苦い経験になりました。
 働くということは、大変なことなのだという勉強でした。世の中の人は病気なんていってられない。一生懸命働いている。そのことを、教えられた一ノ瀬牧場でした。