いつもの川辺を歩いていました。
寒い朝でした。冷たい風が耳元を撫でていきます。川面にさざ波が立って、その細やかな規則正しさに見とれるほどでした。
カルガモが堤防の上でお昼寝中。
マガモはお尻のカールを突き上げて、顔を水の中に突っ込んでお食事中。
シロサギは後頭部のかんざしを風に揺らしながら微動だにせず獲物探し。
ジョウビタキは明るくなった春の日にオレンジ色が映えていました。
オオバンもそう。お顔の白さが際だつ陽光でした。
しばらく歩いて、二本の川の合流点まで来て、いつもここにいるコガモを見ようと川をのぞき込みました。
少し深い淵になっているところの岸に、ダイサギとアオサギがすっくと立っていました。
その横でコサギとマガモが仲良く餌取りをしています。
鳥たちは種族を越えられるのでしょうか。見ている人間に何かを教えているようです。
ふと真下を見たら、石の上に黒い影を発見!
サギだと思っていた鳥は、なにやら頭に冠が付いています。つがいとおぼしきもう一羽はさっきから「バチャンバチャン!」と音を立てて潜っては思わぬところから顔を出しています。
お初にお目にかかりました。
川鵜(カワウ)です!
そのとき、すぐに思い出したのは、芥川龍之介『蜘蛛の糸』のなかでお釈迦様がすべてお見通しというくだりです。
犍陀多(カンダタ)が蜘蛛を踏みつぶさなかったことをご存知だったのと似て、私がつい最近ブログに「お水取り」のことを書いたことをご承知で、鵜に遭わせて下さったとしか思えませんでした。
潜水上手で見飽きません。昔の人もそう思ったから、若狭から奈良までのお遣いにされたのだと容易に想像がつきました。
双眼鏡を覗いたら、冠も水かきもはっきりと見ることができました。何より感激したのは、羽の深緑色です。水鳥が美しい緑をまとうのはなぜでしょう。
カワウは瞳もダークグリーン色です。あなたはどこから来たの?ずっと西域から?そんなことを訊いてみたいカワウでした。
一時は絶滅危惧種に近づいたこともあるけれど、いまでは害鳥扱いであることを知りました。
地球上のすべてのいのちに人間が介在することの難しさ。手を貸すことが生態系を壊すことになる。あらゆることはなすがまま、なされるがままが正解なのかもしれません。
見守ってくださるだろうどなたかがお見通しです。見まもることをお止めにならないよう祈り続けるしかないようです。