こころあそびの記

日常に小さな感動を

“かぶりつき”

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 一般的には、チケットを入手しようとするとき、「どのお席がいいですか?」と受け付けの人に訊ねると「そうですね・・前から10列目の中央ですね」と応えられます。
 舞台が見渡せるし、音響に偏りがない特等席であることは、間違いありません。
 ですが、ファン心理としては一席でも前で観たいというのが本音です。
 宝塚歌劇場で、そのプラチナチケットを手に入れたときの興奮は忘れる事ができません。
 ご贔屓さんに目の前で歌われると、かえって恥ずかしくて顔を上げられなかったこともありました。衣装から落ちてきた羽根は、隣の人がなさるように拾って宝物に。
 ”かぶりつき“は、10列目では味わえない、観た感があるのです。お腹いっぱいの幸せ感です。

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 今朝の産経抄西郷輝彦さんの思い出話が載っています。
 昭和49年の梅田コマ劇場のお話です。
 この出し物で森繁久弥さんと出会い、お芝居のいろはを学んだことがその後の糧になったようです。大御所に愛される人柄でもあったことでしょう。
 懐かしいです!実は、私はこの二年前の舞台の千秋楽を“かぶりつき”で観たのです。
 当時、舟木一夫さんのファンだったのになぜそんなハプニングが起こったのかわかりません。
 でもね、これはとてもとても貴重な舞台だったことは間違いないのです。
 幕が下りるとき「彼をよろしく頼む」的な発言をされた年長の役者さんがどなただったのか覚えがないのですが、ひょっとして森繁久弥さんだったのでしょうか。
 そのときの、言葉の念の入れようがすごかったので、これはあるいはと、芸能レポーター志望の私としてはその匂いを嗅ぎつけていました。
 案の定、次の日、「西郷輝彦電撃婚」のニュースが流れ、やっぱりかと自分の勘が当たったことを嬉しく思いました。
 大阪の劇場から軽井沢の教会までとばしていく気持ちが、恋に恋する娘にはたまらなくて、辺見マリさんを羨ましく思ったものです。
 渡辺謙さんの「初対面の時『いつでもいつでも~キミだけを~』と歌ったら叱られた」というコメントが最高です。
 明るく送ってあげるのが、彼の望むところだと思います。
 ご冥福をお祈りします。