こころあそびの記

日常に小さな感動を

泣かないで

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 コロナ禍が社会にもたらしている残酷な話を耳にしました。
 調理師として働いていた四十代後半の男性。コロナでお店が閉まり失職したあと、生協のドライバーやら、仕分けやら慣れない仕事を昼夜なくこなしているうちに、体調不良に陥ります。
 お子さんがまだこれからという年齢でもあり随分無理をされたようです。
 病院はコロナベッドを空けるため、長期の入院はできなくて、不調の原因を調べるにも時間がかかったそうです。
 そして、子どもたちにコロナをうつしてはいけないという理由で、実家の父母宅に連れてこられた時には起き上がることさえできなくなっていたといいます。
 極度のストレス物質が難病を引き起こしてしまったと脳神経内科の診断が出たと、お母様がお話してくださいました。

 人は同じように見えても、それぞれに持ち合わせの体力も気力も違うものです。
 あの人がなんのこれしきと思えることが、自分には耐えられないこともあることを知っておくべきです。
 芯から疲れきってはいけないと昔の人は戒めました。

 シンプルにアクセルを踏める状態ならいざしらず、現在のようにサイドブレーキを引きながらアクセルをこわごわ踏んでいる毎日にあっては、誰もが発病の火種を持っているといえるでしょう。
 ダメですよ。無理をしては。
 しんどいといえない責任感の強い人は特に気をつけてください。起き上がれなくなるまで、無理を重ねたらだめですよ。

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 憎きコロナ禍ではありますが、家族の在り方を見せてくれました。件の彼には安心して静養する場所があります。幸せなことです。でも、老母はおっしゃいました。「いつまで親をせんとあかんのやろ」。
 産んだ時から死ぬまで。神様がよく頑張ったといってくださるまで。と私は心の中で自分に言い聞かせたことでした。
 老人は金銭的余裕も体力も残っていないから不安が先だっておられるのです。どうかご無理ございませんようにとしか励ましの言葉がありませんでした。
 そんな母を見た娘さんが「お母さん、大丈夫やから」と言ってくれたと、一瞬嬉しそうな表情を見せられました。「ちょっと気が楽になりました」と。他人が言うと薄情に聞こえるかもしれず控えていた言葉が、このどん底の母を助けたのですね。
 大丈夫!やはり魔法の言葉です。

 コロナに罹って体調が以前より良くなる人があれば、罹らなくてもこんな苦境に立たされる人もいる。
 この方程式を解く鍵は神様しかお持ちでない。
 正解のないこの世を生きている私達。
 小鳥はなんで囀るのかな?
 花はなんで咲くのかな?
 足元の自然を感じて心を中庸に保てるようにと、どなたかが創作なさったとしか思えません。たとえ床に伏していても空を雲を見れる自分でいましょう。
 そして、どんなときも、心の感度が落ちたと思ったら、勇気をもって思い切って休むことです。
 身体が疲れるのは寝たら治るかもしれないけれど、心が停止した状態からの復活は難しいことです。
 健康は心が先導していることを思い知らされた一件でした。