こころあそびの記

日常に小さな感動を

しらさぎ、はくたか、しらゆき。

 大聖寺川の瀬音に見送られて、芭蕉も愛した山中温泉に別れを告げ、今日はこれぞ“脳トレ”という一日を過ごしました。
 なにせ、6線路を乗り継ぐことは、突然の旅行ゆえに結構ハードル高くて内心ドキドキしました。
 人間、どうしてもやるんだと腹をくくればなんとかなるものです。
 今日の目的の一つは、上越新幹線の車中から、立山を見たいということでした。
 金沢駅を出ると、白山から始まり、立山へその向こうの越後の山々の残雪が輝いて見えました。それらを興奮気味に連写する婆さんを、同乗者たちはうるさく思われていたことでしょう。
 それにしても、雪山の白はどうしてあんなに美しいのですか。どうして、空の色に飲み込まれないのですか。私は魅了されるばかりです。好きなものはと訊ねられたら”雪“山というに決まっています。
 まさに、神さまの贈り物です。
 見えない日もあるのに、見せてもらえたことで、一番目の目的は叶いました。

 日本海に注ぐ沢山の川を渡りました。
 どの川にも、この時期ならではの豊富な雪解け水が流れる様子が美しいことでした。たっぷりと勢いよく流れ下ってきて、穀倉地帯を潤すことがよくわかりました。
 

見渡す限りの田園風景、といいたいところですが、越後はまだ冬の出口。春の扉が開くには時間が要るようです。

 太陽が弥彦山の向こうに落ちる寸前に、弥彦神社に到着しました。
 越後の一宮は、清涼な気が全身に染み渡るような場所でした。
 参道だけでも充分に満足したのですが、明日の下見にと思ってロープウェイ乗り場に行ってみることにしました。
 案内板に「ロープウェイ乗り場あたりに、カタクリが咲き始めました」と書いてあるではありませんか。
 行ってみることにしました。森林浴の道は「万葉の道」として、万葉集に出てくる植物が植わっています。越後の民度を感じました。
 ロープウェイ乗り場で、仕事を終えた従業員の方が洗車されていましたので、「カタクリはどこに咲いていますか?」と厚かましく訪ねたら、心優しい男性は案内してくださったのですが、残念ながら、携帯電池が切れたので撮影はできませんでした。明日撮れるかな?秘密の場所ですものね。
 そう思って、もと来た道をもどって行くと、登山道から下りてきた女性二人とばったり出会いました。
 「この奥にも神社があるのですか?」
 「いいえ、ないと思いますよ」
 「私たちは今日、良寛さんの国上山から上がって縦走してきたんです。カタクリの群生がきれいでしたよ」


 なんと、山は美しいのでしょう。
 私はマスクをしていたのですが、
 「こんなところでは外して、この空気を吸わなくちゃ」と教えてくださいました。
 鬱蒼としたスギ林の中の空気の気持ちいいこと。ありがたさが身に染みました。
 ところが、続きがまだあるのです。
 「本殿もいいけど、ここの祠に神さまが下り立ったと言われてて、人によってはパワーを感じるらしいよ」
 キャ!元・弥彦ですか?
 暗闇迫る森の中。全然怖くない祠の祈りでした。

 出会う人がみんないい人ばかり。
 その最初は、JR川西駅緑の窓口の駅員さんがいい人だったからですね。
 無理難題を聞いてくださった上に、気を利かして、立山が見える右側、日本海が見える左の席と取ってくださっていたから、満喫できたのです。
 初めよければすべてよしとはこのこと、あらためて勉強になりました。彼にお土産買っていこうかな。

 楽しい旅も明日まで。明日は何が起こるかな?