こころあそびの記

日常に小さな感動を

芳しい春の匂いを嗅ごう!

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 三日ほど前は、台風が南風を吹きこんだために真夏日になった所もあったくらいでしたのに、今日は一転して、前日マイナス10度。コートを出してこないと応戦できない寒さです。
 出勤途中にふと山の方に目をやると、先日までとは打って変わり、山桜の色は消えて、雨に濡れたせいもありましょうが、山は美しい新緑色に装いを変えていました。これぞ、三日見ぬ間の山姿です。

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 自然は黙っているようで、瞬々刻々と変化しています。
 目に見えることがすべてではないことも、自然に教えられる大切なポイントです。
 特に、近頃、興味深い植物学の話題を目にすることが多くなりました。

 昨日の夕刊には、岩手大学大学院生の大崎晴菜さんの研究が掲載されていました。
 蓼科のエゾノギシギシの群生は個体同士が話し合って連携しているではないか。
 そして、そこにコガタルリハムシが寄ってくるのは、他の虫が嫌うタンニンの味を食べる選択にシフトしたことによって、生き延びる方法を考え出した結果ではないかというのです。

 植物と昆虫の関係は長い年月をかけて構築されたもので、一朝一夕、即席のものではありません。
 過日読んだ『香君』にも、度々、アブラ虫とてんとう虫が登場します。
 てんとう虫はアブラ虫を日に100匹も食べるそうです。しかし、そのてんとう虫を追い払ってくれるのがハチです。それは、アブラ虫がお尻から出す蜜を舐めさせてはあげて成り立つウィンウィン関係といいます。
 
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「我が身を喰われた草木は、香りを発して、その虫の天敵を引き寄せる。草木の香りが虫を誘い、草木によって土も変わる。無数のものたちが行っている、そういう、めまいがするほど複雑なやりとりが、今このときも、この世界で起きている」(『香君』より)

 植物世界は観察の積み重ねです。見ているつもりで見えていなかったものを発見する喜びは、南方熊楠牧野富太郎という先人を持つ日本では、誰もが受け入れやすい世界観でしょう。
 植物や菌類の驚きの世界は重層的で複雑です。畏れを持つに値する奥深さがあります。
 
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 また、植物は個性的な香りを持っていますから、人間が植物を知ろうとしたら、まず香りを嗅ぐことから始めましょう。
 身近かなところでは、今、最盛期のタケノコがあります。
 私達が子供の頃は、お肉屋さんに行ったら、竹の皮に肉を包んでくれたものです。それは竹が出す香りにカビや病原菌を遠ざける働きがあるからです。
 それを、人間が利用させてもらっているのです。
 笹も竹も同類です。
 もうしばらくすると、端午の節句です。
 笹の葉で巻いた粽を食べます。
 先日、新潟からお土産に買ってきた笹団子も美味しかったなぁ。
 人間は他の生物が編み出した知恵を利用させてもらっている。それを知れば知るほど自然との共生が絵空事ではなくなるように思います。