こころあそびの記

日常に小さな感動を

あまがける飛天


 たんぽぽの花と綿毛と蝶々。
 とても、工事のフェンス越しに撮ったとは思えない春の一枚が撮れて、朝の散歩は気分上々となりました。

 今朝の火野正平さんの『こころ旅』は大原野神社からのスタートでした。
 朱塗りの本殿に見覚えがあるように思いましたが、まだ行ったことのない神社で、調べてみたところ、784年に奈良の春日大社から分霊されたそうです。
 しかも、1005年には、中宮彰子が行幸藤原道長紫式部もお供したとあります。
 いつだったか、乗り合わせたタクシーの運転手さんが、「私は西山の方が好きです」と仰っていたことを思い出しました。
 そうだったのですね。京都市内に乗り入れる前に降りて、長岡京を散策する機会がないことに気づかせてもらいました。
 長岡天神から金光寺、大原野神社
 歩いてみたい西山です。


 そのロケ中にある男性が、
 「いい仕事されていますね。2010年の日本の風景、いい記録になりますよ」
と声かけされました。正平さんへの何よりのエールになったことでしょう。
 「俳優やおまへん。自転車おじさんになってしまいました(笑)」
なんて、ごまかしておられますが、この記録フィルムがいつか後世に役立つ日がくると私も思っています。
 今、生きている人の記憶に残る風景が、きっと後の人もいつか見た懐かしい風景と思える気がしてなりません。そのためには、この平安な日々が続きますように。
 

 ところで、次の展開なんて考えもしないで、走りたいから走っているだけなのに、予想外のことが起こることがあります。
 
 拙著の版元となってくださったドニエプル出版の社長、小野元裕さんもそんなお一人です。
 ドストエフスキーが好きでロシア語の勉強をしていたとき、ウクライナがロシア発祥の地と知り、あちらに一年間滞在した後、日本とウクライナの橋渡しとなる文化交流協会を設立されました。
 以後、何度も行き来して、ウクライナの人々を知れば知るほど、その明るい民族性と文化に親しみを持って今に至ります。
 今般、”まさか“という坂に直面されています。
 世界には二百カ国を超える国がありますのに、ピンポイントでウクライナの縁者に白羽の矢が当たり、東奔西走の毎日になっておられます。

 こんなことも、この世の不思議といえるように思えてなりません。
 儲けではなく、好意でしてきたことが、大きく取り上げられることになるなんて、ご本人も想像だにしてなかったはずです。
 選ばれた人になる。それも、とてつもなく低い確率です。そこには、誰かの思惑が働いているとしか思えません。

 中島みゆきさんの『地上の星』です。
 火野正平さんも、小野元裕さんも飛天に選ばれし地上の星です。
 
 数かぎりなき飛天は空をあまがけり
 地に楽の音のわきたつところ   岡野弘彦