どくだみや真昼の闇に白十字 川端茅舎
曇天の重い空気の中で、ドクダミの真っ白な花に出会うとハッとします。よく見れば、白い十字形の総苞片に薄黄緑色の花が立ち上がっています。
民間薬として、役立ってきた草ですが、それを観賞用に植えておられるお宅を見つけました。
びっしりと同じ高さで咲いている様子は、園芸店では手に入らない美しさでした。ご主人はセンスありと察したことです。
(ポプラに花が咲いている)
さて、今日の窓口から。
92歳のおばあさんのお薬を、ご家族が薬局に取りに来られました。
ご本人は元気に過ごされているようですが、悩みは排便です。便秘がひどくて、摘便してもらわないと出せないそうです。
「マグミットという下剤が何年も処方されています。それでも、出ないと訴えたのですが、お医者さんはきいてくれません。ある病院でマグミットを飲み続けると却って便秘になるよと看護士さんに教えてもらいました。本当ですか?」というお悩みでした。
薬の効用は、すべての人に同じように現れるものではありません。
マグミットというマグネシウム剤は腸の中に水を呼び込むことで、便を軟らかくして排便させます。
呼び込む水があればOKですが、体に水が無ければ効果がないことは、当然の結果です。
この患者さんはご高齢です。
概して、高齢になれば水分量は減ってしまいます。
そのため、おばあさんになるとシワシワになるのです。
これを「陰虚」といいます。陰が少なくなるということです。
ここで、漢方でよく使われる陰陽という言葉の説明をおおざっぱにしておくと。
陰は目に見えるものだから“水”をさし、陽は目に見えないものだから“気”をさします。
水は陽気(火)の勢いを抑える働きがあります。水がなくなれば、便秘のほか、火照りや不眠や痒みが出てきます。
赤ちゃんは体重の90%が水ですが、年とともに減少して成人は70%、老人では60%になります。
つまり、先の老人の便秘はマグミットが呼び込めるだけの水がないことが原因のようです。
近頃の高齢者向けのベストセラーもそこのところを説いているように思います。
誕生から成長して、老化にいたる過程はすべての生物に共通です。人間だけが、薬で逃れられるものではありません。ブッダでさえ、その深刻さを目の当たりにしたために出家したくらいです。
人は必ず老いるのです。そのことを知っておくべきです。
体が一生同じ状態ではなく、変化していることを知っておきましょう。
スーパーで袋に詰めながら老女がお連れに悩み相談されてます。
「あんな、私もう八十過ぎてるんやで。せやのに、糖尿病になってん。そんなことある?」
そうなんです。年とともに臓器も血管も力をなくしていきます。弱るのは、足腰だけではないのです。若いときのようには体は働けません。
また、言いにくいことながら、長寿になったために、なるはずのない病気が出現する確率も高くなります。
70歳を越えたら、薬は必要最小限といわれるのも故あることです。体が代謝する力を失っているのに飲んでも、負担なだけです。
薬に頼らない排便の方法は、案外、食事量を減らすことで上手くいくかもしれません。でも、お世話する家族がいい人すぎるとうまくいかないかもしれない。
それもまた人生と思えばよいのではないでしょうか。