こころあそびの記

日常に小さな感動を

マグノリアの花

 六甲山が霞んで見えます。大気が湿気をたっぷり含んで空も雲も山も中間色。
 ぼんやりした感じがきれいだなと思いました。

 アジサイに主役を譲って、泰山木が静かに花の時期を終えようとしています。
 あのたっぷりとした花弁は、矯めつ透かしつ木の下から探してもなかなか見えないものです。
 時に、目の高さで咲いてくれると、豊かな花びらにありがとうって云いたくなるくらいです。
 純白ではなくて、ミルキー色。温かみを含んだところが泰山木の花のもう一つの魅力です。


 泰山木はマグノリア科の仲間です。
 拙著の表紙に書くために「玉村豊男」さんの画集からマグノリアを選んだのも随分前になってしまいました。
 上手には真似出来ませんでしたが、構図が似ているからご本人に了解をいただいておいたほうが良いとアドバイスをもらったので、お手紙を差し上げたことがありました。
 長野県上田に住まわれ、晴耕雨読の生活に入られて、何年目だったでしょう。
 とてもキュートな自画像入りのお葉書で、「どうぞ使ってください」とお返事を頂戴して大喜びしたことを懐かしく思い出します。
 玉村豊男さんとは、そんなご縁です。


 先日、阪大図書館で新書コーナーを漁っていたら、彼の著書を見つけました。
 『今日よりよい明日はない』というご本でした。
 ご無沙汰でしたのに、こんなところで再会できて喜び勇んで借りてまいりました。

 テレビのコメンテーターやコマーシャルなど、マスコミに引っ張りだこでしたのに、ご病気された後に、長野に居を移されたことは薄々存じ上げておりました。

 題名になっている「今日よりよい明日はない」は、偉人の言葉ではなくて、ポルトガルを旅しているときの会話から心に残った言葉だと云います。
 ポルトガルという王国を経験した民が、幸せとは何かを達観して受け入れているように思うと書いておられます。

 もっともっと幸せになるためにはと考え込むなんてばかげています。
 それは、体験不足の人の思い込み。
 もしも、病気になったり、心に傷を受けた人は幸せは足下にあると気がつくはずです。
 
 恩人、玉村豊男さん。
 マグノリアの花が咲くと、長野県上田のヴィラデスト・ガーデンファームを訪ねてみたくなります。