昨晩のことです。
見ず知らずの方のご好意で手に入れたありがたい笹を飾りつけ、ライトアップして、気分は上々、家族でつついた鍋は、ハモ鍋でした。
今年初の鱧ですから、みんな「美味しいね」を連発して食べていました。
そんな最中、誰かさんの小さな声がきこえてきました。
「キュンキュン。なによ、自分たちだけ美味しそうに食べて。シランシラン」
鳴き声ともつかない拗ねた声の主は、愛犬ラブです。
そのなんともいえないイントネーション。犬がお話しするってこの事だと、彼の方を見ないようにして、その声を楽しませてもらったことです。
今朝の朝刊の生活面に「犬と暮らせば健康に」という記事がタイミングよく掲載されました。
国立環境研究所などが、犬を飼っている高齢者と、飼っていない高齢者を比べたら、飼っているほうが介護、死亡のリスクが半減していると報告しているそうです。
鵜呑みにはしませんが、犬は古くから人間と共に生きてきた友達ですから、まず、犬ほど主の心を読んでくれるものはありません。
淋しいとき、横に座ってくれるだけで、自分の中の悲しみを吸い取ってくれるように感じます。
元気に走り回ってくれたら、見てるだけで笑顔になれます。
ハモ鍋を堪能したあとで、スネポンしながら待ってくれた犬にイイ子イイ子しておやつをあげたら、短い尻尾をクリクリ動かして喜んでくれた様子もまた家族を喜ばせるものでした。
さて、彼の鼻をくすぐったいい匂いの正体である鱧。
夏になると食べたくなるのは、体に染みた天神祭のせいでしょう。
あの忙しないお囃子は、「コンチキチン」という悠長な祇園祭のカネの音と対照的です。
天神祭は大阪の雑魚場の威勢の良さが勝負です。夏の鱧とタコが主役です。
鱧はウナギの親戚。骨きりして、さっと湯に落として花開いたときが茹で上がりです。
その顔を見たらわかりますが、裂けた口からのぞく獰猛な歯は、強い生命力を感じさせます。
「寒、潤、補脾益気、利水」。
暑さを冷まし、胃腸を滋養し体力をつけ、体にたまった余分な水分をおしっこにして出してくれる。夏の食卓に益する食材です。
鍋に染み出たお出しの上品で淡白なスープも味わえて、昨日は満足な夕餉でした。