こころあそびの記

日常に小さな感動を

水の日に

 昨日、鴨川沿いを歩いていたら、目の前を一羽の雀が横切りました。
 夏痩せした小さな雀でした。
 私たち人間だけが喘いでいるのではないことを、雀が教えてくれました。
 みんなで耐えよう、この暑さ。

 京都は、いたるところに神社仏閣があって、無下に通り過ぎるのも憚られます。
 ということで、豊臣秀吉公の崇敬篤く、満足という二文字を秀吉公から賜ったという『満足稲荷神社』という神様にお参りしました。
 ここの茅の輪は旧暦奉納で、6/30から設えてありました。まさか、こんなところで「蘇民将来」と唱えられるとは思いも寄らず、巡り合わせに感謝してくぐらせていただいたことでした。

 境内にある立派な御神木は樹齢400年のクロガネモチです。何本も枝分かれして、辺りに霊気を感じさせました。
 写真の塀と神木の間にある黒い石が岩神さんだそうで、
 「岩神さんをさすり頭をなでると頭がよくなり、いたいところや悪いところをさすると治るといいつたえられています」と、書いてありました。
 皆様に心を込めて贈ります。

 昨日のお目当ては京都市京セラ美術館の西側にある細見美術館です。
 隠れ家的な設計が素敵な美術館です。
 中抜きになっている館内は静かで落ち着きます。

 現在、「美しき色いにしへの裂(きれ)展」が開催中です。
 色好きの私としては外せない展覧会です。
 
 植物染「染司よしおか」五代目当主の吉岡幸雄氏(1946~2019)の出演されているビデオが館内に流れていました。
 植物を育て、染めの工程を経て、織物に仕上げるまで心休まる暇もありません。
 どの工程も緻密な計算が必要です。
 その家に生まれたからというだけでは継げない厳しさが伝わってきました。
 
 友達に行ってきたよとメールを送ったものの、「あれほどの根気が必要なら、未来永劫、織師は諦めました」と情けない感想しか思いつきませんでした。
 

 吉岡幸雄さんのご本を開いて、色見本を眺めるのが関の山です。
 「藍は夏の色である」と書いてあります。
 そして、日本の色です。
 ラフガディオ・ハーンは「青い屋根の下の家も小さく、青いのれんを下げた店も小さく、青い着物を着て笑っている人も小さい」と日本の印象を記したそうです。

 ヨーロッパに渡ったインディゴブルーではなく、日本の藍色の清々しさ。その名も甕覗(かめのぞき・・一番薄い青色)、浅葱(あさぎ)、縹色(はなだいろ)と段階的に濃くなっていきます。
 今頃、全国で藍が育っていることでしょう。
 刈り入れが済めば、手を真っ青に染めながら、冬には冬の、夏には夏の藍液の声を聞き分けてお仕事されるんですね。  
 植物への愛と自分への厳しさ。
 そういう風に生きてみたかった。