こころあそびの記

日常に小さな感動を

老い最中

 日の出の時刻が遅くなり、方角も南よりになってきました。これから始まる長い冬に向かっていることを感じさせます。
 目覚まし時計を止めて、醒めきらないまま犬と外に出たら、あたりが幻想的な色に包まれています。やわらかいペールピンクでした。
 思わず見上げた空には薄紅色の絹雲が浮かんでいたので、慌てて写真を撮りました。

 出勤時には空一面に真っ白な絹雲が広がって、台風の接近は微塵も感じられない静けさです。

 さて、今朝の『芋たこなんきん』で、火野正平さん演ずる兄貴が「老後を、奄美大島で過ごさないか」と、弟夫婦に持ちかける場面がありました。
 
 「老後」の過ごし方。昨日から、頭の隅に引っかかっていたことと符合して、少しセンチになっています。
 というのは、友達の動向です。
 週末に九州に行くから会えないかとメールしたら、「週末はほとんどゴルフ三昧です」と返ってきたのです。
 冬の網走ユースホステルに一緒に行った友達です。彼女とは、お誕生日が一日違いで、『誕生日占い』によると、そんな二人はよき相棒らしいですから、彼女とは旅する運命にあったということでしょう。
 そんなことはどうでもよくて。

 動き回っている「老後」ということに、少なからず嫉妬したわけです。
 そんな人は他にも。大学時代の友人は、ファッションファッションしていたのに、いつの間にか山登りが趣味となり、今や、世界の山を制覇することを楽しんでいるみたいです。
 彼女らが、華麗な老後を過ごしているように、端からは見えてしまいます。隣の芝生は青いというところでしょう。
 翻って、自分の老後は、これでよいのだろうかと、はたと立ち止まってしまう瞬間は誰にでもあるのではないでしょうか。
 

 私の父は八十歳代でも高速で車を運転していましたし、ゴルフにも出かけていました。
 反対に、母は家に閉じこもるばかりの生活でした。
 運動神経が鈍い母の質と、じっとしておれない父の質が合体した私が作り出す老いとは。

 「老い最中 今日できることをぼちぼちと」

 やりたいことがあることと、やれる自分を信じること。
 それが老いを健やかに生きる秘訣だという確信を、心にすきま風が吹きこんだ時にも忘れない自分でいたいと思ったことです。