こころあそびの記

日常に小さな感動を

旅の余韻

 綾町。高千穂。

 台風十四号の暴風雨がこないだ訪れたばかりの町を襲っています。

 写真は一週間ほど前の五ヶ瀬川。延岡から高千穂に向かう道に沿って流れています。今はどうなっていることかと、テレビの情報画面に出続けている二つの町に祈ることしかできずにいます。

 帰ってきたばかりだからか、高千穂の印象が消えません。「自分の故郷だと思って、何度でも来て下さい」という地元の方の言葉が、私の中で育ちつつあります。

 人はひとりひとり違う故郷を持っています。

 そんな個々人の故郷とは別に、日本に生まれたことの意味を考えるとき、高千穂は大きな力を持っているように思えます。

 

 

 

 高千穂は天孫降臨の場所。

 混沌とした氏族の争いの世界に降りてこられたニニギノミコトは、稲作を教えます。

 その後、ニニギノミコトの曾孫である神武天皇は東に向かい、奈良の橿原で即位されることになります。

 なぜ、神武天皇が奈良を選んだのかは、高千穂を歩いてみると感じるところがありました。それは、稲作に適した穏やかさを持つという共通点にあるのではないでしょうか。

 倭健命の詠まれた歌。

 「倭は国のまほろ

   たたなづく青垣

   山籠もれる倭し麗し」

 奈良の飛鳥に似た鎮まりと、山に囲まれた場所が高千穂でした。

 

 その山の一つにニニギノミコトが降臨された、くしふる峰があります。

 「筑紫の日向の高千穂の

   くしふるたけに天降りましき」

 降臨されたお山に是非足をお運び下さい。神様に選ばれた神々しいところです。

 

 宮崎市内の小高い丘の上、平和台公園に『八紘一宇』の巨大な石像がありました。

 神武天皇が、

 「六合を兼ねて都を開き

   八紘をおおいて宇にせむ

   (それぞれの文化や宗教を大事に             しながらおたがいに尊敬しあ  

    う)」

と、宣言された言葉から取ったものだそうです。

 

 天皇のことを”すめらみこと“と申しますが、“すめろぎ”とは、糸にたくさんの玉を通してこれを一つの輪にまとめたという意味があるそうです。

 戦時中には、別の思惑に利用されたこともあったようですが、今は本来の意味を称えて聳えています。

 

 個性や生き方がまるで違っていても、なぜか神の前に拝すときには心鎮まるのが、日本に生まれた人の自然な心持ちではないでしょうか。

 「真の日本人こそ真の国際人」。

 出光佐三さんの言葉が21世紀にはますます通用しそうです。

 神道の国に生まれたありがたさを雨と風の音の中で感じています。どうか、かの地に被害の少ないことを念じながら。