朝のルーティンを終えて、自分のコーヒーを煎れたら、自由時間が始まります。
BS『グレートネイチャー』で、「御神渡り」、しかも、屈斜路湖の「御神渡り」を放映していました。
しかしながら、北海道の日本最大カルデラ湖である屈斜路湖にも起こる現象とは知りませんでした。
屈斜路湖と聞くだけで、朝から、温かい思い出が蘇ってきました。
大学生の頃に美幌峠から見た屈斜路湖です。
全面凍結したところに雪が積もっていました。真っ白な世界、音のない静寂な世界。
誰もいないのです。この世にこんな場所があることを、雪の世界を経験したことのない自分は、ただただ美しく思いました。
私の心の中に忘れることなく、ずっとある風景です。火野正平さんの『心旅』にお手紙書きたいくらいの場所です。
でもね、言葉にならないくらい大切な思い出って、心にしまっておきたい気持ちもありまして、こうやって、何かの拍子に思い出して懐かしがったりしているわけです。
雪と氷の世界は私が感じたように、心のお荷物であるつらさみたいなものを忘れさせる作用があるように思います。
厳寒であることが、反射的に温かさに振れるからでしょうか。
先頃、一世を風靡した『アナと雪の女王』は、アンデルセン作『雪の女王』が下敷きです。
仲良しを引き裂く邪気が氷の世界で溶かされていく。
作者のアンデルセンは貧しい生活を送ったといわれます。そんな彼の生い立ちを思えば、この世の残酷な現象に立ち会ったことは想像に難くありません。彼の残した作品が”怖い“といわれるのも仕方ないのかもしれません。
中学生のころ、『雪の女王』を読んで学んだ言葉は「永遠」です。
女王のお城で、ゲルダが氷のパズルで「永遠」を作ろうとしているシーンが、私に永遠を初めて意識させました。
女王はなぜ、「永遠」をテーマにしたか。それは、永遠に溶けない世界と氷はいつか溶けるから永遠はない、ということの相反を孕むもの。
溶かす力は温かいエネルギーです。
頑なであれば固まるし、自由に解き放てば温かさが戻るもの。
この原則は、心と体の健やかさに通じます。
久しぶりに氷の世界をテレビで観て、あの凍るように寒かった場所に立っても心が凍らなかった日を思い出してほんわか気分になりました。