こころあそびの記

日常に小さな感動を

さようなら付君

 

 日常に小さな冒険があるだけで、ウキウキと心を躍らせることができます。

 たとえば、行き慣れている場所に行く時、あそこに行くには何分かかるから、何時何分に家を出たらいい。と、いつも同じ道程で計算するのも堅実ですが、ちょっと違ったルートを探せば、それだけで、小旅行気分を味わえます。

 A地点に行く方法はいくつもあります。

 電車といっても、地下鉄あり私鉄ありJRあり。バスだって高速バスという手もあります。私は近頃、リムジンバスの奈良路線をよく利用しています。

 そういえば、大形徹先生は急行には乗らないそうです。鈍行のほうが仕事も捗るとおっしゃってました。

 仕事はしなくても、鈍行で沿線を味わいながら行くのも乙なものです。

 時間に余裕がある時は、そんな楽しみ方を考えてみてはいかがでしょう。

 

 

 今日は上六に行く日でした。

 ちょっと寝坊したので、大阪城経由はあきらめました。さて、どうするか。家を出て、移動しながら、考えました。梅田着が9時を回ってましたので、とっさにJRを選択しました。

 環状線で鶴橋に降りて、歩くことにしたのです。それなら、いい感じで上六に着けるはずと。

 鶴橋といえば焼き肉。開店前の看板の前で夜の賑わいを想像したり。また、あるお店では小籠包をせっせと作っている最中でした。あまりに美味しそうで、今から勉強でなかったら買ってしまったことでしょう。

 こんなささやかな非日常体験が心の解き放ちに役に立つように思っています。

 帰りはもちろん伊丹空港行きリムジンバスです。”551“の空港店の行列がおそろしく長くて、孫のお土産は諦めざるを得なかったことは誤算でしたけど。

 こんな風に好き放題にできる年になったことがうれしい。

 今を楽しんでいます。

 

 

 今日は、中国人留学生の付(ふ)君が顔を見せてくれました。

 大学を卒業してから、日中通訳者として働いていましたが、この度、故郷に帰ることになりました。

 私が大形徹先生の授業にお邪魔するようになったとき、中国語を聞いたこともない私に、毎回、『千字文』を少しずつ読んで録音してくれました。

 初めて聞いた中国語の発音は彼の声でした。本当に優しくて、いい子なんです。だから、名残惜しい気持ちでいっぱいです。

 

 

 彼は、中国の一人っ子政策のただ中で誕生したご両親にとっての宝物です。

 もう帰ってきて結婚してちょうだい、というお母様の気持ちは、親として当然です。

 久しぶりの再会の時間はあっという間に過ぎてしまいました。たぶん、もう会うことはないでしょう。

 中国の印象を良いものとしてくれた彼には感謝しかありません。どうか、幸せになってほしい。命あるかぎり、あなたの幸せを祈っています。