庭に、うっすらと粉雪が降った痕跡がありました。
昨日、お話を聞いた満州はマイナス40度といいます。そんな寒さと知らずに、開拓団として長野県や八丈島から渡った人たちのご苦労はどんなだったでしょう。
そんなこと思いながらテレビをつけたら、NHKBSで『Art is our voice』というウクライナ国立バレエ団のドキュメントが放送されていたので、見入ってしまいました。
戦争が今この同時刻に多くの人生をかき乱している現状を、バレエ団員の追跡から描いてありました。
こんな時に踊る意味があるの?と若きプリンシパルが苦悩を訴えていました。
また、兵士として前線に送られたお父さんと電話で安否を確かめ合ったダンサー。その父が言います。
「これが最後の電話になるかもしれない。男になれよ。自分のルーツを忘れるな。愛しているよ。」
その言葉に民族の違いはありませんでした。もし、こんな戦争に巻き込まれたら、私だって、こう言い残すことでしょう。
番組では、昨年、ウクライナ国立バレエ団の芸術監督に就任した寺田宜浩さんの動向を伝えていました。
11歳でウクライナにバレエ留学した彼は、ウクライナのバレエ芸術を残すことが自分の使命だと語っていました。
この息子を送り出したお母様は、チェルノブイリ事故のときにも馳せ参じたという強者です。
肝っ玉母さん。子供を人並み以上に育てる人は、エネルギーと子供への愛に満ちていることが条件です。
自分の周りにいる、そんなお母様方の顔を思わず思い浮かべたことでした。
日本で、昨年行われたウクライナ国立バレエ団の全国ツアーを前に、「白鳥の湖」の演目がカットされたそうです。
チャイコフスキーがロシア人だからという理由ではありません。ロシアがバレエを政治利用しているためのようです。
長年に渡って作り上げてきた文化の形が壊されるよりも怖いことが起ころうとしています。どうか、この恨みが続きませんように。
「今、この瞬間が大切なのです。明日、会えない人がいるかもしれない。だからこの瞬間に感謝している」。
サンサーンス『瀕死の白鳥』を踊られた方の言葉です。瀕死であっても最後まで生きようとするウクライナの人々。
踊ることで、“ウクライナと共にいてください”と伝えている団員の皆さんの思いが世界中に届きますようにと願わずにはおれません。
そして、日本ウクライナ交流に尽力されている、すべての方に敬意を持って思いを寄せ続けたいと思います。