こころあそびの記

日常に小さな感動を

春来たるらし

 

 春は名のみはどこへやら。急に汗ばむ陽気になりました。

 山の方は霞がひどくて写真を撮る気にもなりません。透明度をなくした空を見上げても、心が晴れない。

 春愁。

 身の回りが春めいていくスピードに、自分が乗り遅れると、そこにアンバランスが生まれます。

 ふわっとした大気の状態に合わせるために、どんなことができるでしょう。

 

 体の内に愁いを貯めないで、発散することです。

 そのために、自然が毎日新しい顔を用意してくれます。昨日と今日が、今日と明日が違うのが、この季節のプレゼントです。

 そうやって、外に誘ってくれています。

 

 さっき、ちょっと散歩したら、こんなに新しい発見がありました。

 

 

 スイセンか、と通り過ぎようとしたら、ちょっと待って!と呼び止められました。一重のニホンスイセンが好きですが、こんな変種もあるのですね。

 

 

 ユキヤナギが咲き始めました。

 

 

 イベリス。ずっと前に植えられた株がしぶとく生き残り、花壇の端に遠慮気味に咲いているのをみつけました。

 

 

 赤目が伸び始めました。人間だけじゃない。赤ちゃんがみんな赤いのは、理由があってのこと。

 あらゆるところで、いのちが生まれる春です。

 

 

 庭の一角に、大きな木があって、倒れてきたらどうしようと危惧しています。

 いっそのこと、切ってしまえば、と家族が言います。

 しかし、いつの間にか、その案は、立ち消えになりました。

 そのわけは、野鳥が身を隠すために、次々やってくるようになったからです。

 「ホーホケキョ!」「ジージー!」「チッチッ!」。

 鳴き声は聞こえますが、姿は見えません。でも、確かにこの木の中に隠れているんです。そう思うと、雑木が愛しくなってしまいました。

 

 

 ずいぶん前に、お絵かきの本と間違えて買った本です。 

 ブルーノ・ムナーリというイタリアの美術家の本です。子どもたちに自然の造形を、ちょっとだけ指南する本です。どうして、今まで断捨離されてないのか。

 おそらく、須賀敦子さんの翻訳というところが捨てがたいところだったのでしょう。

 

 一本の木。見方は人によって違います。その時の心の状態に同期するともいえましょう。しかし、木が心を一様に癒してくれている。

 それが自然です。

 

 さて、アウトプットが完了したら、お家にかえって、インプットしましょう。

 ふわっとする感覚を補助したいなら、ニラやネギやノビルです。卵炒めが効果的ときいています。

 これらが持つ(辛、昇)という性が、体内に眠っていた躍動する感覚を覚ましてくれます。

 それから、外界の刺激で鼻水が出てる人には、酸っぱいものが効果的です。酸味は収斂作用がありますから、お寿司もいいですね。

 蕗の薹や土筆の早春の苦味も、冬の間にたまった老廃物を排出してくれますよ。

 

 冬眠から躍動する春へ。

 動かなかった冬に溜まった老廃物を捨てて、これから始まる活動にチャンネルを合わす。それを今の季節に済ませましょう。

 

 

 一日の最後にお風呂で温まったら、仕上げは睡眠です。

 春眠暁を覚えず、が、この季節の贈り物です。遠慮は無用。ゆっくりお休み下さい。