こころあそびの記

日常に小さな感動を

住みたい町を育てるために

 

 今年は当たり年。梅の実が鈴なりです。

 梅干しの産地なら間引くところですが、どの子もみんな元気に育ってほしいから、見守っています。

 

 

 さて、BS『こころ旅』。火野正平さんはいつまで自転車をこぎ続けるのだろうと、心中はらはらしながら観ています。

 番組に寄せられるお手紙で、いつか行った旅先の次に多いのは、幼少時を過ごした場所のようです。

 生まれ故郷を訪ねてみたくなるのはどうしてでしょう。そこで過ごした日々が、波穏やかな記憶の底にあるからでしょうか。

 

 正平さんへお手紙するほど遠くない場所が、こころのふるさとだという私は幸せ者です。

 上六の荘子の講座に行くのに、足が元気だったときは大阪城公園を一周することにしていましたが、今は車通学です。

 

 国道一号線から谷町筋を南下、アパホテルが見える谷町六丁目を過ぎた「南大江小学校前」の信号を左折すると、昔の通学路になります。

 電信柱ごとに、じゃんけんして友達とランドセルを持ちっこした懐かしい坂道です。

 その坂道を上りきったところが「上町」交差点。

 そこから続く道が私のおすすめです。今、地図をみると「内久宝寺町通り」「紀伊国町通り」と名前がついています。そんなことも知らずに通った道でした。

 この道の何が昔と変わらないかというと、空気です。

 古い酒店の看板が色あせ朽ちているのに、そのまま残っています。あの店の同級生が寝ぼけ眼で今にも飛び出して来そうな、そんな通りです。

 騒がしいばかりがクローズアップされる大阪ですが、こんな場所もあることをプチ自慢したくなります。

 

 

 ところで話は飛びますが、文化都市計画で金沢ほどすすんだところはないそうです。

 この「すすんだ」の意味は、古い文化を継承しながら生活できる町ということです。

 町には、受け継がれた文化があります。金沢の場合は、加賀前田藩が文化を奨励した伝統が今も息づいて、加賀友禅九谷焼漆器、加賀象嵌など工芸品の宝庫となっています。

 それを壊さないためには、そこに、住む人々の民度が問われます。

 

「美しいものを作るべき人間は、美しいところに住まねばならない」

 と、ウィリアム・モリスが唱えたそうです。

 

 JR金沢駅、金沢美術館を中心に、多様な工芸品の町に作り上げることができたのは、金沢の人々の誇り以外のなにものでもないように思います。

 

 

 どんな町に住みたいか。

 昨日、統一地方選挙が終わりました。

 選挙結果は、その土地に住む人の価値観の現れです。

 文化を育てるには、ひとりひとりが良いものを見る目を養わねばなりません。そのインスピレーションは自然や歴史の中から産まれるのではないでしょうか。

 熟成に時間がかかるからと、土地の文化を壊してまで、目先の住み良さを追求することに走るご時世に危惧しています。