こころあそびの記

日常に小さな感動を

だいすきな志

 

 犬も歩けば棒に当たる。

 ではありませんが、春爛漫。歩くたびに新発見できる季節です。

 仕事場が市民病院の近くなので、車に気をつけながら駐車場を横断していましたら、なにやらいい匂いが漂っています。

 向こうの方に一列。数本の木に白い花が鈴なりに咲いているのが見えました。

 好奇心のままに、近寄って写真を撮ってGoogle検索してみましたら、「ニセアカシア」とヒットしました。

 夏の季語のはずが、すでに盛りを迎えています。いい香りは「天国の香り」といわれるだけあって、蜂たちの集まり方は尋常ではありません。

 私だって蜂に生まれていたらアカシアの蜜を集めてみたい、そう思わせるほど濃厚な甘い香りでした。

 漢名では「針槐(ハリエンジュ)」と書きます。交野の公立大学附属植物園で、冬にプレートだけ見た木です。花を見るのは初めて。

 感激して、娘に写メしたら「藤みたい」と返ってきました。それもそのはず、マメ科ですもの。

 ちなみに、マメ科は現在の地球上で勢力を誇る一群だそうです。

 

 

 うっとり気分に乗じて、お恥ずかしい告りをしますが、私、好きな人ができました。

 その人は、「産業遺産情報センター長、加藤康子さん」です。

 テレビで初めて拝見したときは、産業遺産というからには、富岡製糸場みたいなものを指すのだろうと思っていました。

 でも、あの見過ごせない雰囲気はどこからくるのだろうという私の嗅覚は確かでした。彼女は私たちの年代ならよく存じあげている「加藤六月衆議院議員」のお嬢様だったのです。

 

 人がワクワクする対象は、それぞれですが、私の場合は、曾祖父母たちの話に反応してしまう質です。彼らの奮闘を小耳に挟むだけで、血肉が沸き立つのです。

 だから、加藤康子さんが、製糸場だけでなく、曾祖父が携わった鉄道を熱く語ってくださるのを見るにつけ、ますます目が離せなくなっています。

 

 

 私たちの学生時代もそうでしたが、今も明治以降の歴史を教えることのできる先生が少ないと聞きます。

 それは、多くの縛りがあるからと承知しています。

 だったら、せめて、自分の縁者から聞いた話を後世に伝えてみるというのはいかがでしょう。

 私たちが明治と関われる最後の年代です。それを、一つずつ集めることができたら、子や孫にどれほどの勇気をプレゼントできるかと考えるわけです。

 

 それを、加藤康子さんがなさろうとしています。

 そのことを知ってからというもの、勝手なミーハー心ですが、同志を見つけた気分です。

 

 

 あなたの側にもきっと、お話しを聞かせてくださる方がおられるはずです。

 実際、わが「花梨の会」のメンバーのKさんが、戦中に日本一の製綿業をされていた方のお孫さんだと分かりました。

 こんな巡り合わせってあるでしょうか。

 どんなお手伝いもできませんが、産業遺産情報センターにKさんのおじいさまを推薦すべく、加藤康子さんにファンレター書こうかと密かに企んでいるところです。