こころあそびの記

日常に小さな感動を

お饅頭を“造“って半世紀

 

 シャクヤクも、薔薇も、ラベンダーも今が盛りです。

 梅雨入りまでにと、慌ただしく咲き競っている姿を見落とさないように、きょろきょろと辺りを窺う私は、さしづめヘンなおばさんそのものです。

 

 

 ラベンダーには蜂さんが。

 

 

 柿若葉では、コミスジ蝶が羽を休めています。

 

 

 昨日、定期考査中の孫のおやつを、福寿堂に買いに行きました。

 

 店頭には、どなたもおられなかったのでお声かけしたら、ご主人と思われる方がシャツ一枚で出てこられました。

 昨日は夏日でしたものね。

 シャツが弛んで少し丸くなった後ろ姿に、お尋ねしてみたくなりました。

 「おいくつですか?」

 「80になりました」

 「おいくつからされてるんですか?」

 「24歳からです」

 「へぇ、半世紀ですね」

 「そうなりますなぁ」

 

 

 「始めた頃は、千里川に丸太が二本かかっていただけでしたんやで」

 「今は、市民が憩う散歩道に整備されましたが、私が知ってる千里川も、かき分けかき分け入っていかないといけない場所でしたよ」

 

 五十年前を知ってる者同士で、話は盛り上がったことでした。

 話しながら、壁に架かっていた表彰状に気づきました。

 

 「”造“はなんとお読みしますの?」

 「”つくる“です」

 「うわぁ。”お饅頭造る“ですね(笑)」

 

 私が憧れを持つのは、こういう人です。コツコツと一つのことを誠実に続けることができた人に、神様は微笑んでくださるように思っています。

 

 

 「今や、福寿堂さんは人気店になりましたね」

 「ありがたいことに、若い人がようけ来てくれはります」

 

 老舗もいいけど、近所のみんなのおやつにちょうどいい。そんなお店があるだけで、家族の笑顔が増えます。

 「どれにしようかな?」

 「やっぱり、今日は草餅にしようと」

 「じゃあ、私は桜餅」

 取り合い、譲り合い、じゃんけんして。

 こんな楽しいおやつタイムが過ごせるのは、おじいちゃんのおかげです。

 どうぞお元気で、“造”り続けてくださいね。